コンセプトの現実と想像

コンセプト(concept)は好き勝手に解釈され定義されてきた。一般的には「概念」や「考え」の意味で使われる。それならわざわざコンセプトと言う必要がない。概念や考えやアイデアとは微妙に違うから出番が与えられている。「ことばで表される大まかな想い」という意味を基本として、「他とは違う固有の差異を表す表現」としてとらえてみよう。

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「コンセプトの発見」とか「コンセプトを探す」などと言われるが、コンセプトはどこかにすでに存在するものではない。モノや考えに付属しているのではなく、モノや考えをとらえる人の頭で湧き上がる。つまり、そのつど想像するものであり、想像の結果、新たに「創造」される。

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タカとワシは峻別されている。発音も違うが、漢字も「鷹」と「鷲」と書き分ける。誰もがタカとワシが別の鳥だと認識している。では、実物のタカとワシを見て、正しく見分けられるか。タカもワシも「タカ目タカ科」であり、そもそも個体識別ができないと専門家は言う。

見分けられないのなら、一つの呼び名、一つの漢字だけで良さそうなものなのに、わざわざ二つの別の呼び名、二つの別の漢字で表そうとした。それがコンセプト。発見したのではない。想像によって、ことばによって、コンセプトを創造して種を分化させたのである。

コンセプトは必ずしも現実を反映するわけではない。生態的にも観察的に区別がつきにくいにもかかわらず、慣習的に取り決めたコンセプトを創ったのである。やや大型のものをワシと呼ぼう、人が訓練でき狩りをさせることができるのをタカと呼ぼうという経緯があったと思われる。