もっと二字熟語遊び

シリーズ〈二字熟語で遊ぶ〉は、二字の漢字「AB」を「BA」としても別の漢字が成立する熟語遊び。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になる場合がある。その差異を例文によってあぶり出して寸評しようという試み。なお、熟語なので固有名詞は除外。

二字熟語アイコン

【内室と室内】
(例)他人様ひとさまの「内室」についてとやかく言う立場ではないが、ずっと「室内」で過ごされているとしたらお気の毒だ。

内室と言うと、大きな屋敷内のずっとずっと奥の方の部屋を想像してしまう。かつての奥方はあまり外へ出ずに引きこもっていたのだろうか。室内というのは妙な空間で、ずっといるとストレスがたまるが、ほどよい時間ならとても居心地がよい。

【品名と名品】
(例)日本刀と言ってしまうと単なる「品名」になるが、正宗と呼んだ瞬間、「名品」の誉れ高いブランドに変わる。

「ピカソの絵画」ではなく、「ピカソの『ゲルニカ』」と言えば、モノがアートに昇華する。普通名詞の品名では、それが何であるかを特定できない。固有名詞の名品だからこそ他とは違うアイデンティティがはっきりする。

【席次と次席】
(例)学校時代の「席次」はずっと首席だったが、社会に出てからは職場でも儀式でも「次席」にすら就いたことがないんだよ。

このようなキャリアを辿った知人がいた。小学校入学から東京大学法学部を首席卒業し大手銀行で課長に昇進するまで、誰の後塵も拝したことのない超エリートだった。しかし、四十過ぎを境にして坂を転がり始めた。
ぼくらの世代の高校時代、学年席次の上位50人が貼り出されたものである。500人中の50番だから優秀なのだが、50番だといじられることもあった。

【数字と字数】
(例)パスワード設定にあたっては、アルファベットと「数字」で8桁以上の「字数」にしてください。

銀行のATMの暗証番号は今も数字4桁で、脆弱ながらも覚えやすくて便利だ。アルファベットと数字を組み合わせて、ID15字、パスワードが12字で入るアプリを使っているが、いつも手帳に挟んだメモをカンニングしている。

【太極と極太ごくぶと
(例)「太極」拳の教室の申込用紙の横に置いてあったサインペンは「極太」で、とても書きにくかった。

太極とは、その字の通り「太い極」で、あらゆるものの存在の根元のこと。握りもペン先も極太の筆記具はコントロールしがたく、画数の多い漢字だと線が重なって文字が判読しづらくなる。