トッピングの作法

日常使われるようになって久しい〈トッピング〉。綴りは“topping”で、おなじみの“top”から派生したことばだ。名詞なら「頂上、先端、最高」などを意味する。動詞から派生しているので、トッピングには「付ける、覆う、乗せる、塗る」のようなニュアンスがある。

トッピングは料理や菓子の上に食材や調味料をふりかけたり乗せたりすることをいう。よく目にするのは、アイスクリームにチョコやナッツをふりかけること、ピザにベーコンやピーマンをあしらうこと、ケーキに粉砂糖をまぶすこと。トッピングが洗練になるか野暮になるかは紙一重。抑制気味にふりかけ、まぶし、あしらうかぎりは料理を下品にしない。しかし、盛り過ぎると残念なことになる。

デザートのケーキとフルーツにミントの葉をあしらい、粉砂糖をまぶす。

具だくさんになって主役の料理がぼんやりしたり、場合によっては台無しになることがある。麺類は昔はシンプルだったが、今は盛るのがはやりのようだ。麺が見えなくなるほどトッピングしたら野暮である。具を多くしたいのなら別皿にして食べればいい。麺類の主役はあくまでも麺である。但し、トッピングを特徴とする海鮮丼やピザはこの限りにはあらず。

有名なお好み焼き店がある。一度行ってみようと思っていた矢先、テレビ番組で紹介され、見ただけで嫌になった。お好み焼きに高級なイセエビやステーキを乗せるのである。お好み焼きは豚肉かイカか、せいぜい二つ三つの小さな具の組み合わせでいい。高級食材をトッピングするコンセプトはたいてい気まぐれだ。そんなことでお好み焼きが進化するわけではない。贅沢にして値段を吊り上げる店側のメリット以外にいいことは何もない。

食のみならず、暮らしや仕事にもトッピングの加減がありそうな気がして、暮らしや仕事のあり方についていろいろ試行錯誤してきた。何かにつけてまずシンプルを目指すのがよさそうだと思うようになった。過剰と不足の見極めが難しく、何事にもシンプルを徹底できているとは言えないが、迷ったら、ひとまず下手なトッピングや過剰を回避するようにしている。