情報の加減の難しさ

「本日、アルバイトが体調不良で急きょ休んでいるため、人手不足につきお昼の営業は休みとさせていただきます」

店の扉に貼り紙。強い違和感を覚える。「本日の昼は臨時休業」というだけで済むはず。それでは愛想がないと感じるなら、休業の理由ではなく、「せっかくお越しくださったお客様にお詫び申し上げます」と添えればいい。

この種の貼り紙を出す店は、たいていの場合、常連客に向けて書いている。常連がアルバイトと一言二言交わすことがあり、また、店主が忙しく切り盛りしているのを見て「今日も忙しいね」と声を掛けたりしているのだろう。

「本日臨時休業」で足りるのに、休業の理由を書きたがる。これまでに「店主腰痛につき」「冷房が故障したので」「スタッフがインフルエンザに罹ったため」……などの貼り紙を目にしてきた。理由まで述べるのは、ある意味で誠意の表れとも言えるが、常連客への甘えと言えなくもない。

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オフィスにベンジャミンの一鉢がある。日光や水やりや肥料に無頓着のまま十数年になるが、手のひらサイズだったのが1メートル以上の大きさになっている。ちょっと本気を出して育ててみよう、剪定や挿木もしてみようと思いネットで検索したところ、「ベンジャミンを育てる時に必要な準備は?」というサイトを見つけた。

鉢、皿、土、肥料、鉢底ネット、スコップなどを差し置いて、準備するものリストの一番最初に何が出てきたか? なんとベンジャミンの苗である。見事な念の入れようだ。「ベンジャミンの苗なくしてベンジャミンを育てることはできない」というのは暗黙の了解ではなかったのか?

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他方、どんなに説明されても、まったく知識がなく、また未体験ならわかりようがない場合がある。花札などがそれ。これもネットの無料ゲームの説明。

こいこいルールの花札です。50文でエンディングです。花見・月見はありません。月札とは同種札四枚を集めた役です。(オリジナルルールなので一般的には無い役です)

幸いにして、花札をよく知っているので容易に理解できる。と言うか、説明されるに及ばない。この説明では入門者には何のことだかさっぱりわからないだろう。と察してかどうかは知らないが、その下に「花札(こいこい)の遊び方」が解説されている。

手札の中から一枚捨ててください。同じ絵柄の札に札を合わせると自分の取り札となります。絵柄が合わない札は、場に残ります。
取札が増えて役が出来たら勝ちです。「こいこい」をして勝負を続行することができます。

ある程度わかっているから意味が汲み取れる。「わかりやすい説明をせよ」などと指導する専門家がいるが、そんな説明が可能だと豪語するなら、実際にやってみればよろしい。説明不足でも説明十分でも、伝わらないものは伝わらない。説明側の一人相撲ではないのだから。「人を見て法を説け」に反発する気はまったくないが、人を見ても説明できないものはできないのである。

説明される側、鑑賞する側にも理解の前提条件が求められる。この話は次回。

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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