クロワッサンとパン屑

ショーソン・オ・ポムを食べる。なに、大それたものではない。「アップルパイ」をフランス語で書いただけ。まずまずの好物だ。

アップルパイは食べにくい。ぽろぽろと皮が剥がれるわ、くずがこぼれるわ、とにかく食べにくい。しかし、それでこそアップルパイだ。ぱりぱりの皮を剥がさずこぼさずに上品に食べている人がいたなら、その人かアップルパイのどちらかが怪しい。皿やテーブルにかけらを落とさず、指や口元を汚さないでアップルパイを食べるのはマナー違反である。

パリに三度旅し、アパルトマンを借りたことがある。レストランで料理を食べるよりも自炊が楽しく、自炊のための材料の買い出しにわくわくした。とりわけパン屋で並んでバゲットとクロワッサンを買うのが日課になった。焼き立てがいいのに決まっているが、必ずしもこだわらない。


アップルパイも皮が剥がれて口元からこぼれるが、クロワッサンはそれ以上に剥がれてこぼれる。しかし、こぼれないようにと手で受けてはいけない。絶対にしてはいけない。

「正月食」に飽きて、アップルパイかクロワッサンを食べたくなった。S.マルクというカフェの前を通りかかったので、コーヒーとクロワッサン生地のチョコレートパンを注文した。店側はそのパンを「チョコクロ」と呼ぶ。チョコレートクロワッサンである。さすがはクロワッサン、ぽろぽろ落ちる。周囲を気にせずに食べ続ける。テーブルや床にこぼし放題。繰り返すが、手や紙ナプキンで受けてはいけない。集中力がパン屑に向くと、クロワッサンがまずくなるのだ。

くずはトレーの上に落ち、トレーからはみ出てテーブルの上にも床にも落ちた。生地のぱりぱり度にもよるが、本体の約10パーセントがこぼれる覚悟が必要。つまり、10個買っても食べるのは9個。それがクロワッサンというものなのである。

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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