イタリア紀行4 「トスカーナに独座する街」

シエナⅠ

諸説いろいろあるが、ぼくの読んだ本には「ヴェネツィアのサンマルコ広場、バチカンのサンピエトロ広場、シエナのカンポ広場がイタリアを代表する三大広場」と書かれてあった。ここにフィレンツェのミケランジェロ広場を付け足してもいいかもしれない。広場そのものはたいしたことはないが、街並みを美しく見せるという点ではひけを取らない。

当たり前のことだが、シエナを取り上げる観光ガイドや紀行文や歴史・文化の本はことごとく「シエナのカンポ広場がイタリア一、いや世界一美しい広場である」と絶賛する。美しさというものは、表現するにしても感知するにしても主観だから、目を見張る美しさ、理性的な美しさ、しっとりした美しさなど、どんな美しさであってもよい。ぼくは「比類なき美しさ」と形容しておきたい。

二度シエナを訪れているが、最初の2004年当時はモノクロのフィルムで光景を収めた。それはそれで間違いではなかったが、なんだかドキュメンタリーな空気を醸し出しすぎていて、シエナの夢想的な空間や上品な街並みが欠けてしまった。フィレンツェに約10日間滞在した20073月に再訪して撮ったのが今回の写真である。

食とワインと言えばトスカーナ。トスカーナと言えばフィレンツェ。そのフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅そばのバスターミナルから南へ約1時間、城壁に囲まれた丘にシエナがある。ここは2キロメートル四方のこじんまりした街だ。他のイタリアの都市同様、ここにも目を見張るドゥオーモ(大聖堂)がある。ゴシック建築と床に張り巡らされたモザイクが有名だ。

しかし、シエナを取り上げるのはドゥオーモのためではない。やはりカンポ広場なのだ。そして、そのカンポ広場に聳え立つマンジャの塔からの景観である。そのパノラマ図は次回。

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ヴィーコロという薄暗い小さな街路の一つに入ると光の空間が借景のように姿を現わす。くぐり抜けるとカンポ広場だ。
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市庁舎に隣接するマンジャの塔。この塔の狭くて急な階段を400段上り詰めると、シエナの街の造形とトスカーナ地方の特徴的な山間農村の遠景がパノラマのように見渡せる。
Toscana1 287.jpgのサムネール画像
塔の前から振り返って見るカンポ広場。ゆるやかな傾斜が不思議な広がりを見せる。広場に砂を敷き詰め17地区が対抗して毎年7月と8月に競馬(パリオ)が開かれる。
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絵葉書。シエナの17地区はコントラーダと呼ばれ、すべての地区に動物を意匠したシンボルマークがある。 (上段左から)鷲、芋虫、かたつむり、フクロウ、竜。 (二段目左から)麒麟、ヤマアラシ、一角獣、雌狼、貝殻。 (三段目左から)ガチョウ、イルカ(波)、豹、サイ(森)、亀。 (下段左)象(塔)。(下段右)牡羊。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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