やめられない二字熟語遊び

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【大盛と盛大】
(例)自分へのご褒美にカツカレーを200円アップの「大盛」にして「盛大」なランチを楽しんだ。

大盛カツカレーごときでランチは盛大にならない。
「盛大な打ち上げをします」と誘われて宴会に行ったが、品数が少なく、大皿に盛りに盛った料理ばかりでがっかりしたことがある。大盛は量的な表現であり、盛大には質的な要素が求められる。

【写実と実写】
(例)対象をあたかも実物のように描くのが「写実」。他方、対象そのものをありのままに記録したり再現したりすれば「実写」になる。

人物を写実的に描いていた19世紀前半、写真という実写の技術が生まれた。実写できるなら写実に出番はない。と言うわけで、人物画は写実主義から印象主義に移ったという背景がある。なお、写実が滅んだわけではない。今も〈スーパーリアリズム〉が頑張っている。

【行水と水行すいぎょう
(例)たらいに半分程のささやかな湯や水の「行水」は夏の風物詩。他方、大量の凍るような水で身を清めんとして我慢するのが真冬の「水行」。

家風呂のなかった時代、毎晩銭湯に行くわけにもいかず、行水で済ますことがあった。今や自宅には風呂がある。面倒な時はシャワーを浴びる。真冬でも水シャワーにして水行の真似をするようになって十数年、風邪を引かなくなった。因果関係は不明である。

【移転と転移】
(例)腫瘍細胞が
原発のXの場所と違うY「転移」していることがわかり、近所の乙病院から遠方の甲病院に「移転」することになった。

Yに転移してもXの病変が消えたわけではない。しかし、市役所に転出願いを出して移転したら、現住所が変わる。新旧の両方の住所を二重登録できないのである。

【中心と心中】
(例)近松門左衛門の『曾根崎心中』で「心中」を遂げたお初と徳兵衛は、言うまでもなく、作品の「中心」人物であった。

舞台は元禄時代、現在の大阪の中心地、梅田。露天神社の森での情死である。お初の名を取って、今ではお初神社と呼ばれる。当時の大坂・・の中心は船場。露店神社の森は街はずれだった。


シリーズ〈二字熟語で遊ぶ〉は、二字の漢字「AB」を「BA」としても別の漢字が成立する熟語遊び。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になる場合がある。その差異を例文によってあぶり出して寸評しようという試み。なお、熟語なので固有名詞は除外。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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