テイクアウトで考えたこと

行きつけの店に「テイクアウトできます」の貼紙、初めて見る店のドアにも同じ文言の貼紙。どこもかしこもテイクアウト。店内飲食不可でもテイクアウトならできる。

以前「テイクアウトは和製英語です」と英語通の知人が言った。別の英語通の所見は「あちらではあまり使わないけれど、何とか通じますよ」。ぼくはと言えば、カリフォルニア州に旅した折りはすべて店内飲食だったので、持ち帰り経験がなく、はたして「テイクアウト」が伝わるかどうか知らない。もし持ち帰ろうとしていたら、おそらく“to go”という一般的な表現を使っただろうと思う。

ともあれ、わが国では「ツーゴー」などとは言わずにテイクアウトが定着した。ちなみに、「こちらでお召し上がりですか、お持ち帰りですか?」という英語――”For here or to go”――を最初に知った時、妙なことを妙な言い回しで尋ねるものだと思った。本格的な料理店で入店するなりこんなことを尋ねられるはずがない。こういう尋ね方はハンバーガーショップから始まったに違いないと睨んでいる。


食べるつもりで店に行ってはみたが、気が変わって持ち帰ることにした。この時のテイクアウトは、店で出している料理と同じものを持ち帰るという意味のはず。たとえば、近くのカオマンガイの店では店で食べるのと持ち帰るものは、容器以外はほぼ同じである。ところが、コロナ禍で自粛し始めてからは、ほとんどの店では店内メニューに載っていない持ち帰り用の弁当を作ってテイクアウトと称している。あるうどん店はメニューにない「とり天丼」を店頭で持ち帰り用に販売している。テイクアウトではなく、最初から弁当と言えばいいではないか。

ピザ屋と自宅はピザの冷めない距離なので、テイクアウトしても味に大差はない。トンカツやハンバーグ定食のテイクアウトも店内メニューとさほど変わらず、持ち帰って皿に盛れば格好はつく。ただ残念なのは、店内なら付いてくる味噌汁がテイクアウトには付いてこないという点。やむをえない。

「寿司、テイクアウトできます」――そんな貼紙を出さなくても、スーパーに行けば、寿司はすべてテイクアウトではないか。オヤジが日本酒でちょっと寿司をつまみ、帰りがけに家族用に一合折か二合折をお土産にしたのが昔からの寿司屋。寿司折を手に帰宅する波平やノリスケの姿が浮かぶ。

先日寿司屋に寄った。店は空いていたが、自粛癖がついているので、二合折を持ち帰ることにした。「ご新規さん、テイクアウトで!」という声に大いなる違和感を覚えた。寿司にテイクアウトという言い方は合わない。お土産か、せめてお持ち帰りと言ってもらいたい。二千円ほどの寿司が八百五十円に格下げされた気分。

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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