「こまめ」がわかりにくい

わかっているつもりなのに、実はあまりわかっていないのが「こまめ」。やわらかい語感と見た目に反して、癖の強い晦渋語の一つである。

こまめ(【小まめ】)とは、まずもって骨惜しみをしないことだ。まじめであり、何かに向かってかいがいしく行動している様子が見えてくる。しかし、「もっとこまめに何々していれば……」などと反省するにしても、その「こまめ」と「もっとこまめ」の違いがはっきりしない。

「熱中症予防にこまめな水分補給を」と言われてから、四六時中ちびちびと飲んだ人がいた。結果、こまめにトイレに行かざるをえなくなった。こまめの頻度と量は具体的に示しづらい。体調や暑さなど、人によって状況によって当然変わる。「30分ごとに」と言う専門家は飲む量を示していなかった。「1015分おきに一口か二口」という助言もあるが、炎天下で15分歩く時に上品な一口では足りないのではないか。


こまめから、面倒くさがらずに細々こまごまと注意したり気配りしたりする様子がイメージできるが、こまめの程度、つまり頻度や量については個人の判断に委ねられる。だから、かねてから水分補給の修飾語として適切なのかどうか気になっていた。

喉の渇きを覚えてから水を飲んでも手遅れ。それでは予防にならないらしい。しかし、喉が渇く前というのはある程度喉が潤っている状態である。「もっと水を!」と求めていない状態で口に水分を運ぶのは簡単ではない。それができるためには、生理的欲求まかせではなく、意識的に水分補給を習慣づけする、何らかの訓練がいる。

こまめとは「労をいとわない、かいがいしく行動すること」とある辞書に載っていた。そうすると、「こまめに」と「こまめな」に続く行為が必然絞られてくる。こまめに辞書を引けても、こまめに笑うことはできそうもない。こまめな水分補給は推奨されるが、こまめなアルコール摂取はよろしくない。

「なまものですので、なるべく早めにお召し上がりください」とは書いてあるが、「なるべくこまめにお召し上がりください」という注意書きは見たことがない。仮に書いてあったとしてもどう食べればいいのかわからない。だから、「なるべくこまめに水分補給をしてください」もやっぱりよくわからない。こまめの代案を考えてみようと思うが、今日のところは思い浮かばない。

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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