ことばがらみの一月

出掛けたり人に会う機会が極端に減って、どちらかと言うと「ことば人間」の自分がいっそうことば人間化しているような気がする。ことば人間イコール頭でっかち人間とはかぎらない。しかし、動いてみたら簡単にわかりそうなことが、じっとしてことばを探っているだけでは何も見えてきそうにない。

自分がことばにからみ、ことばが自分にからみついてきたこの一月だった。ことばとの――ことばだけとの――付き合いは物足りないが、無言語地獄の深みに嵌まってしまうよりはよほどましだと思う。


✍ 守破離は「道を求める人」の鍛錬手法であり、断捨離は「道を外した人」の残念手段である。

✍ 身体にツボがあるように、ことばにもツボがある。ツボを刺激して身体を整えるように、ことばも整える。整体と整語。

✍ 自分の普通を認識するには普通でない存在と付き合うのがいい。しかし、そうしているうちにやがて「普通でない自分」へと変えられていく。「ウィズコロナ」などと妥協しているうちに人は普通でなくなってきた。

✍ アイデアはイメージとことばで形になるが、誰かと共有するにはことばで何とかせねばならない。その過程に情念を挟んではいけない。なぜなら、情念というものはたいていことばの邪魔をするからだ。

✍ 女店主は親しみやすく、ランチは素朴でおいしかった。そして一句できた。

親睦しんぼく素朴そぼくにほっこりカフェのぼく

✍ 「言葉が人を作る」とか「人は言によって知られる」とかの謂は、たぶんほぼ真理だと思われる。

✍ 先月同様に今月もコラムやキャッチコピーを書く仕事が多かった。特に調べることはないが、傍らに諺辞典を置いてある。ところで、「諺」は「言+彦」であり、彦は「くっきりとした顔」の意である。つまり、諺とは本質をコンパクトにうまく言い表した文章で、キャッチコピーの役割を果たしていたのではないか。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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