語句の断章(30)概念

「コンセプト」という用語を使わずに企画手法を講義するのは難しい。広告業界で普通に使っているこのことばを、はたして初めて企画を志す人たちにきちんと説明できるだろうか……ある時ふとそう思い、私塾の講座の前にいろいろ調べたことがある。

ラテン語起源のconceptコンセプトには「つかむ」という意味がある。哲学用語としてよく使われるBegriffベグリッフはドイツ語で、これも「つかむ」である。明治時代にこうした外国語に触れた時、対応するやまとことば・・・・・・が見当たらず、「概念」という和製漢語をこしらえた。でたらめに漢字を選んだわけではない。「概」にもつかむという意味があったのである。

概は「ガイ」と音読みし「おおむね」と訓読みする。稀に別の読み方がある。「とかき」がそれ。升に盛った穀類や豆類を平らにならす時に使っていた棒、あれが「斗搔とかき」だ。適当に米や小豆を升に盛り、盛り上がった分を斗搔きですり切り、升の中の内容量を「いつものようにほぼ・・同じ」にする。

概はおおむねなのだから、厳密に正確ではないし多少の例外も生じる。しかし、全体がある程度正しければ良しとする。手でジェスチャーするのは難しいが、「こんな感じのコンセプト」と言う時に、ややことば足らずながら、何とか苦心して一言にしたり一行にしたりする。概念は「対象をおおよその認識でつかむこと、そしてその想いをことばにすること」という感じなのだ。

コンセプトを概念と訳してしまうと哲学や思考の難しい方面の響きになるが、感覚を言語に置き換えるプロセスでの「だいたいこんな感じ」という、仮のつぶやきだと思えばいい。概念は抽象的と誤解されるが、決してわかりづらいものではない。個々の特殊性にこだわらず、全体を見た時にどんな共通性があるかをざくっとつかむことなのである。

投稿者:

proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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