イタリア紀行13 「美しい人生の舞台」

アレッツォⅠ

アレッツォ(Arezzo)という街について詳しかったわけではない。フィレンツェから南東へ普通列車で1時間ちょっとの立地なので、日本を発つ前から訪問地にリストアップしていた。前知識は、映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の撮影舞台であること、毎月第一日曜日に骨董市が出ること、エトルリア時代の面影を残していることくらい。この街の名物は何と言っても「サラセン人の馬上槍大会」だが、開かれるのは6月と9月の年二回。訪問したのが3月なので、観光的にはシーズンオフだった。

純粋に街の散策に徹することにした。駅から旧市街までは徒歩10分。メインのイタリア通りをぶらぶら歩きする。骨董市の日だったので、大勢のアンティークマニアで石畳の狭い小道がごった返していた。一見してプロと思われる人々も品定めをしている。買い付けに来ている数人の日本人にも出会った。

くだんの映画の主演・監督を務めたロベルト・ベニーニの故郷がこのアレッツォで、その縁もあって舞台になったのだろう。映画に頻繁に出てきたグランデ広場に興味津々だったが、アンティークのにわか屋台が埋め尽くしていて臨場感には乏しかった。「グランデ」は「大きい」という意味なのだが、映画のシーンで感じたほどの広さではない。

歴史上の有名な芸術家がこのアレッツォで生まれ育った。グランデ広場は別名「ヴァザーリ広場」と呼ばれており、ルネサンス後期の芸術家兼建築家のジョルジオ・ヴァザーリにちなんだものだ。本人が広場の設計に携わっている。他にも絵画に初めて遠近法を採用したピエロ・デッラ・フランチェスカもこの街の出身である。

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アレッツォ駅。旧市街の北東のプラート公園へはモナコ通りかイタリア通りを経由する。 
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イタリア通りに立つ骨董屋台。
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ガラクタか掘出し物か判然としない品々。狭いスペースに雑然と放り出されている。
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使用済み絵はがきを売る店。何語かわからない時代物にもマニアが存在する。
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そこかしこの通りが人で溢れ返る。
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古い建物の外観をリフォームしたカフェレストラン。“Vita Bella”は「美しい人生」。おそらく映画の題名を拝借したに違いない。
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グランデ広場の一角に存在感を示すヴァザーリ設計のロッジェ館。1階は天井の高い柱廊。
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イタリア通りの街角。建物の壁色はベージュとグレーの色調が多い。 

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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