様々な言い様

たいていのモノやコトには複数の言い表し方がある。意味が「ほぼイコール」のものや分化したファミリーを含めて、これらを「類語」とか「同義語」と呼ぶ。角川の『類語新辞典』で【未来】を引くと、「これから先に来る時」という共通概念が最初に書いてあり、続いて「先、行く手、末、今後、前途、将来」など、40もの類語が挙がっている。

類語は基本の意味を共有することば仲間と言える。類語探しによく似ているのがキャッチコピーやネーミングだ。ことばの工夫をしたりあれこれと言い換えてみたりして、これぞという表現をひねり出す。言いようによって雰囲気やニュアンスが変わる。

オフィスの図書室/勉強部屋は、悩みに悩んだ挙句、20185月にspin_offスピンオフと命名。いろいろ考えていた方向のものとはまったく違う名称になった。突発的に「いろんな試みが派生する場」というコンセプトが浮かび、派生の意味を込めて名付けたのである。

当初は図書室だから本や読書にちなんだ名前を考えていた。「本日は晴天なり」をもじって「本日は本の日なり」を思いつき、英語にしてみたら“It’s a book day today.”と語感もいいし、これはおもしろいとほくそ笑んだ。しかし、イベント名ならまだしも、部屋の名前をいちいち「イッツァブックデーツゥデイ」と呼ぶのは面倒である。「本日ほんじつカフェ」というのも浮かんだがボツ。

本というたった一文字の漢字からインスピレーションを得ようと実にいろいろ考えた。まさに「様々な言い様」を試行錯誤したのである。まず、本が授けてくれる恩恵を「本の○○」の形にしてみた。

本の希望  本の激励  本の快癒かいゆ  本の幸福  本の精神  本の所縁ゆかり
本の宝箱  本の夢中  ……

続いて、視点を変えて本という字を二つ使って「本の本○」という言い様にしてみた。

本の本気  本の本懐  本の本命  本の本末  本の本棚  本の本箱
本の本意  本の本位  本の本題  本の本分  本の本音  本の本体
本の本望  本の本質  本の本当  本の本能  本の本番  本の本論
本の本家  本の本線  ……

この発想はなかなかいいではないかと自画自賛したが、いくらでも思いつくのは平凡の証ではないか。それに、どれも部屋の名称向きではないと結論した。しかし、メモを捨てずに置いてあったのはなぜか。未練が残って、いつか「勉強会の今日のテーマ」として使おうと思ったからだ。

図書室を公開イベントの場として使わなくなって間もなく2年。活用してもらってこその空間である。当たり前の穏やかな日々が来る年に戻ることを願いながら、読書会、書評会、朗読会、また時事トークや笑芸を来春あたりから開催したいと考えている。

投稿者:

proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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