イタリア紀行53 「アルケオバス二周目」

ローマⅪ

アッピア街道を巡るアルケオバスは、停留所で手を上げて乗車し、降りたい場所をサインで知らせる、「ストップ・アンド・ゴー方式」。サン・カッリストのカタコンベで下車して軽く見学。バスは20分毎に来る。再乗車してチェチーリア・メテッラの墓で下車する。復路はまったく同じではないが、牧歌的な風景の中、狭い道路も勢いよくアルケオバスは走り抜ける。このまま終点のテルミニ駅まで行くか、それともカラカラ浴場あたりでもう一度下車するか……。

迷うまでもない。ポケットに入っているのは一日乗車券である。当時はユーロ高につき、バス代13ユーロは2100円くらい。結構な料金である。アッピア街道を一周して、はいおしまいではもったいない。というわけで、復路の途中、カラカラ浴場の停留所で降りることにした。テレビや雑誌の古代ローマ特集では必ず取り上げられる遺跡。カラカラ帝によっておよそ1800年前に築造された。内部見学するかどうかしばし思案したが、意外に広大なのであきらめた。ややロングショットに眺めても見応え十分である。

ふと耳を澄ませば、遠くから鐘と太鼓の音が聞こえてくる。赤っぽい衣装に身を纏って行進する人たちが見えてきた。やがてカラカラ浴場外壁前の緑地帯までやって来て行進が止まる。どうやら小休止のようである。聞けば「ローマ文化保存協会」会員によるPR・啓発パレードであった。所望すれば、生け捕った敵に見立てて短剣を首に突きつけて撮影シーンを演出してくれる。

カラカラ浴場からアルケオバスに再乗車して、アッピア街道を見納めようともう一巡りすることにした。不思議なもので、一周目にはあまり視界に入らなかった風景や、ロムルスの廟、チェチーリア・メテッラの墓などがしっかりと見えてくる。街道沿いの遺跡は半壊したり劣化しているが、チェチーリア・メテッラの墓はよく整った建造物の佇まいを今に残している。春を告げるミモザを眺め、さわやかな風を受けながらの二周目。復路は真実の口経由で終着点のテルミニ鉄道駅まで乗り続けた。

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カラカラ浴場の外壁。
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緑地帯を挟んで見渡す遺跡は古代を偲ばせる。
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アッピア街道沿いのの光景。
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マクセンティウス帝が息子ロムルスのために造営した廟。
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チェチーリア・メテッラの墓の前の古代街道。
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古代ローマ軍人や当時の市民の衣装を纏った保存協会員たち。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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