「ふ~ん」程度の小話を少々

思い出しテスト  

手に取ったことはないが、時折り新聞広告で紹介されるのが、「常識思い出しテスト」や「四字熟語・ことわざ思い出しテスト」の類のシリーズ本。「もの忘れ、認知症にならない」と謳っている。はたしてそんな効果が期待できるのか。

思い出しとは、知っていることや記憶にあることを取り出して再生することだ。広告には、思い出そうにも覚えた記憶のない例題がいくつかある。一度も覚えていないことや知らないことは思い出しようがないではないか。思い出しテストとは「雑学クイズ」を新しく言い換えた本にすぎない。

聞き間違い

「きみ、たまには教養的なたしなみもしないと……。能楽なんかどうかね?」
「教養を身につけたいとは思うけれど、能書きを垂れるのはどうかなあ。」

これは聞き間違いである。こういうプチジョークは手軽に創作できるが、調子に乗ると矛盾が起きる。

「これで一件落着だな。」
「たった一件の落書で済んでよかったね。」

落着らくちゃく落書らくがきはめったに聞き間違わない。間違うとすれば、読み間違いだろう。だから、やりとりが会話調になると不自然なジョークになる。

今日の星占い  

「あなたの今日の運勢はまずまずみたい。自分のご褒美に少しぜいたくを、って書いてあるわ。」
「ようし、今日のランチはソース焼きそばの大盛りだ!」
「わぁ、すっごくぜいたく!」 

ふ~む。人それぞれの考え方があり、人それぞれの幸せがある。

「ふ~ん」程度の小話

ちょうど  

「身長はちょうど174.6センチです」と誰かが言ったら、「どこがちょうどやねん!?」とツッコミを入れるところ。しかし、この前段で何かの条件として174.6センチが示されていたら、「ちょうど」でいいのである。一般的には区切りが良い時に「ちょうど」と言い表わしたくなる。たとえば、「ちょうど6時に着いた」や「ちょうど一万円」というふうに。

セルフのカフェに二人で行った。コーヒーが1190円。注文は2杯だから合計380円。百円硬貨を四つ出した。店員が言った、「400円ちょうどいただきます」。違う違う、ちょうどじゃない。トレーにぼくが380円を置いた時のみ「ちょうど」と言えるのだ。彼にとって400円はちょうどいい数字だったかもしれないが、ぼくにとってのちょうどは380円である。そうでないと、20円のお釣りがもらえない。

ご新規  

まずまずオシャレなイタリア料理店の昼時間。ホールをこれでもかとばかりに仕切る、歳の頃四十半ばのベテラン女性。厨房に向かい「ご新規、二名様で~す」と声を張り上げる。ここは居酒屋か……。

ぼくの後に78組の客があったから、同じ数だけ「ご新規、……様で~す」を耳にしたことになる。いちいち「ご新規」などと言わずに「二名様、こちらへどうぞ」でいいと思うが、「5番テーブルのお連れ様、お越しになりました」との違いをはっきりさせたいらしい。食事をしているぼくには関係のない情報だ。厨房に行って静かに業務連絡をしていただければ幸いである。

増毛  

西田敏行よ、そんなことを言ってしまっていいのか。髪の毛に悩む男どもはマープ増毛法に賭けて大枚をはたくのではないのか。すがるような思いで髪の毛を増やしたくてやって来るのではないか。にもかかわらず、なぜあなたはニーズに応えてあげないのか。いったい西田敏行は何と言っているか?

「マープ。増やしたいのは笑顔です」。

増やしたいのは髪だと思っていたが、ぼくの読みが足りなかった。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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