ことばを遊ぶ「三連諺」

三連諺。「さんれんげん」と読む。自惚れるほどではないが、たぶんオリジナルの造語だと思う。「雨降って地固まる」や「案ずるより生むが易し」というのが通常の諺。三連諺は、ある一つの諺を基点にして、あと二つを加え、そこにおかしみや教訓を醸し出そうとする試みだ。

連言れんげんというのがあるが、これは論理学用語で「そして」という意味。これとは違う。「小薬は草根木皮 中薬は衣服飲食 上薬は治心修身」は近い。要するに、単発よりも三つセットにして本質をよりよく理解しようというわけだ。

「髪が抜ける」。ありふれている。「歯が抜ける」。これも普通。「腰が抜ける」。大変だけれど、よくある。しかし、これら三つをくっつけて、綾小路きみまろが語りかける。

「お集まりの熟年世代のみなさま。髪が抜け、歯が抜け、腰が抜ける今日この頃……」。これで会場が爆笑となる。無機的な一言一言を連ねてみれば、そこにリズムが生まれ独特のおかしみが演出される。

諺の多くは賛否両論、是非が拮抗する。一文に想いを凝縮しているため、説明不足であったりする。したがって解釈いろいろ、諸説噴出する。たとえば「出る杭は打たれる」。そうとも言えるし、そうでもないかもしれない。そこで、これをネタにして三連諺を創作した。

「出ない杭は打ちようがない 出かけている杭は打たれる 出てしまった杭は打たれにくい」

「能ある鷹は爪を隠す」も、どこかからいきなり飛び出してきたみたいで唐突。文脈が見えにくい。そこで、この諺を二つ目に置いてみる。「技ある鷹は爪を磨く 能ある鷹は爪を隠す 芸ある鷹は爪を求めず」。能と対比して、技と芸を並べた次第。

「小なる悪銭目もくれず 中なる悪銭身につかず 大なる悪銭よく身につく」。インチキ商法を見聞きするにつけ、つくづくそう思う。元の諺を「中途半端な悪銭だからダメ」と読み違えてあげる。

「頭隠して尻隠さず」の頭を顔に変えてみるとどうなるか。

「顔隠して尻も隠す 尻隠して顔隠さず 顔隠して尻隠さず」

最初は「謎のヴェールに包まれたおくゆかしい人」。二つ目は「ふつうの人」。たいていの人はそうして道を歩き対人関係をこなしている。最後は「アブノーマルな人」。元の諺は「アブノーマル」を示唆してはいるが、それがいいとか悪いとかまで言及していない。四連諺にすると、最後は「顔隠さず尻隠さず」となって、これはクレヨンしんちゃんのことを意味する。

暇なときにお試しあれ。佳作・傑作ができればぜひ投稿していただきたい。 

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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