ジョークの作法

ジョークでウケるコツは書き尽くせない。仮に列挙できるにしても、頭で理解したコツが場に及んでのワザになるのはごく稀である。PDCAサイクルを回すようにはいかないのだ。

ジョークはユーモアを醸し出す。ユーモアの語源は「体液」である。聞いてくれる人たちの体液のめぐりをよくしてあげれば笑いが取れる。医術やリンパマッサージによるのではなく、これをことばでやらねばならないのだから、コツを指南するのも容易でない。

しかし、作法なら書き出せる。ジョークの披露のしかたや聴き方には心得ておくべきことがいくつかある。

1.最初にジョークのテーマを告げてはいけない。
「ハンバーガーショップで働くフリーターにまつわるジョークなんだけど……」。こう言う人が結構いる。ジョークの命は意外性。前置きは野暮である。

2.自分で笑ってはいけない。
起承転結の転や結に差し掛かると、他人よりも先に吹き出してしまう人がいる。これをやってしまうと、オチの効果が半減する。笑うのもよくないが、途中で解説したり注釈を入れたりするのも避けるべきだ。

3.さほどおもしろくないジョークでもウケた振りをする。
これはなかなか難しいが、「振り」は人間関係万般に通じる作法だ。テレビの「人志松本のすべらない話」も半数以上すべっているのだが、芸人仲間の聞き手は上手に振る舞う。おもしろがっておけば、立場が変わった時にお返しがある。

4.すでに知っているジョークでも初耳のように聞く。
創作でないかぎり、ジョークはジョーク集や他人から仕入れている。すでに知っているジョークがあって当然。たとえ自分の十八番ネタであっても、知らん顔して辛抱強く聞かねばならない。

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とあるパーティー会場の一隅で雑談が熱を帯びている。ジョークを披露しようと誰かが喋り始めた。まだ話の入り口だと言うのに、「あ、そのジョーク、知ってるよ」と一人の若者が口を挟んだ。案の定、ジョークは不発に終わる。こんなことが何度か続いて、場がしらけかけていた。この光景を見かねて、傍らにいた初老の男性が若者に声を掛け、離れたバーカウンターに誘った。

「きみはお若いのによくジョークをご存じで感心していた。けれども、他人のジョークは黙って聞くものだ。たとえ知っているジョークでも、初耳のように装って最後のオチまできちんと聞く。それが礼儀作法だよ」。若者は素直に忠告を聞き入れ、感謝のことばを告げて仲間の輪に戻った。

ほどなく輪の中の男性が「とっておきのジョークがあるんだ」と言って話し始めた。若者は時々うなずきながら最後まで聞き届け、反応よくみんなと一緒に笑った。笑いがおさまった頃、ジョークを披露した男性に若者は言った、「いやあ、三度目の初耳だったけど、おもしろいジョークだったよ」。

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不思議だが、どんなジョークも欧米っぽい匂いがする。日本での場面を想像しづらい。ジョークを披露し合うという文化がこの国ではまだ成熟していないからだろう。したがって、残念ではあるが、ぼくのジョークの作法にもあまり出番はないように思われる。

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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