小題軽話(その1)

一つのテーマについて一応の筋道を立てて小文を書くのは、たとえそれが仕事ではなく、私的な慰みのブログであってもエネルギーを使う。頭が働かない夏場は特にきつい。と言うわけで、先月から整理していた過去ノートから断片メモを拾い、小ネタを肩肘張らずに扱うことにした。《小題軽話》と名付けたが、この意図通りに書けるかどうかは不明。

すぐに気づかないダジャレ  書評会で立川談四楼の『もっと声に出して笑える日本語』を取り上げたことがある。実話をネタにしたダジャレや小話満載の文庫本。たとえば、クイズ番組でパネルの好きな番号を選んでもらったら、具志堅用高が「ラッキーセブンの5」と言ったという話。このおかしさにはすぐに気づく。しかし、次のはどうだろう。

面接官 「ところで、家業は何ですか?」
応募者 「カキクケコです」。

これ、文章を読むとすぐにピンとこないが、聞くだけなら「家業」と「か行」のダジャレに気づきやすい。笑わせる小話を文で綴るのはやさしくない。

星占い  いつぞやの水瓶座の今日の占いに「自分へのご褒美に少しぜいたくを」と書いてあった。大した仕事ができていない日々で、ご褒美などありえなかった。それに、休みの日ならともかく、平日に仕事の合間をぬってのぜいたくにどんなものがあるのか思い浮かばない。朝一番にこの占いを見ていたら、提案に乗ってステーキランチという手もあっただろうが、占いを見たのは夜も更けてからだった。
今日の星占いは朝一番に見るもので、一日の終わりに見てしまっては後の祭りである。

悩んだらサイコロ  悩んだら、「えいやっ!」と答えを出せばいいと思うのだが、悩む人の場合はなかなかそうはいかないようである。答えが見つからないから悩む。正しい答えを出さねばならないと思うから決断が遅くなる。正しい答えではなく、納得する答えを選べばいいのに。とは言え、たとえばABの選択にあたって悩むのは、AにもBにも納得できず、第三の道も見つからないからだ(あるいは、ABの納得度が五分五分で踏ん切りがつかないということもある)。
限界まで考えても悩みが消えず、しかも時間が切迫してきたら、覚悟を決めてサイコロを振るしかない。このような助言をしたことは何度もあるが、そもそも悩む人は、サイコロを振るか振らないかで一から悩み始める。

記憶と世界  記憶力がよいのも良し悪しと言う人がいる。記憶が良すぎると嫌なことも覚えてしまって困ると言うのだ。記憶力の悪い人への慰めにすぎない。記憶力が悪ければ、嫌なことを忘れるが素敵なことも忘れるではないか。最近とみに、ぼくの周囲の四十代半ばを過ぎた面々に物忘れのひどいのが増えてきた。良きも悪しきも分別なく平気で忘れてしまう。本人に困っている様子はない。困るのは回りの人間のほうである。
ぼくたちは過去と記憶で繋がっている。過去の経験や思い出は写真や記念品を介して甦ることがあるが、写真や記念品に頼らずに脳内で自力再生できる記憶力が重要なのだ。四十代で思い出しづらい兆候が出てくると、還暦過ぎる頃には危険である。
記憶を通じてぼくたちは世界とも繋がっている。記憶が弱まり衰えると世界が見づらくなる。ここで言う世界とは、現在の仕事や私事、他人、日常生活、言語のことである。

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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