最多質問グランプリ

ざくっと数えてみたら、これまで実施した研修・セミナーは1,500回以上、講演や勉強会を含めると2.000回を超えていた。自慢しているのではない。しかし、ささやかな自信にはなっている。これらの体験から導けるぼくなりのセオリーがあるとすれば、たとえそれが世間の標準と異なっていても、少しは真理の一部を照射しているかもしれないという自信である。

二十代から四十代の人々が抱えているヒューマンスキルの悩みはいろいろだ。悩みと直結するかどうかはわからないが、もっともよく耳にした質問。それは、「どうすれば自分の考えていることをうまく伝えることができるのか?である。

この質問は、ここ20年間ぼくが立ててきた仮説――「二大ヒューマンスキルとは思考とコミュニケーション」――と重なる。コミュニケーションにはさまざまな含みがあるが、ここでは「伝える」に重きを置いている。コミュニケーションのラテン語の原義「意味の共有化」(考えていることを他人にもわかってもらうこと)に近い。

よく考えよく伝える。多くの人がこの壁にぶつかっており、なかなか突破口を見つけるに至っていないのである。どうすればいいか? どうしてあげればいいか?

結論から言えば、一生かかっても突破口は見つからない。思考とコミュニケーションに到達点や終着駅などないからである。「昨年よりうまくなった」とか「前回のプレゼンテーション時よりはまし」という実感は持てるだろう。しかし、考えていることを消化不良のまま発話したり、核心部分の言い残しがあったり、適切な表現が見つからないまま思いと裏腹な伝え方をしてしまったり……こんなふうに切歯扼腕するのは常である。いま、勢い余って「せっしやくわん」などという難解な四字熟語を使ったが、あまり適切な伝え方ではないとつくづく思う。

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ともあれ、最高頻度の質問に対して「突破口はない」とは不親切極まりない。そこで、「少しでもうまくなりたい」と言い換えてヒントを示したい。

思考という主観的メッセージをいきなり伝達という客観的表現に変換しようとするから、「考えていることをうまく伝えられない」のだ。したがって、考えていることをいきなり他者に伝える前に、まずもっとも身近なコミュニケーション相手である「自分自身」に伝えてみること。そのためには主観的に考えていることを客観的に再構成して、「思考を明快」にせねばならない。

思考の深さ・浅さではない。明快さである。こっちを押さえれば、それに見合った適切な伝達表現が絞られてくる。あまり上等な比喩でないかもしれないが、「プレゼントの中身と包装・手渡し方」の関係に似ている。プレゼント(=思考)も定まっていないのに、包み紙とリボン(=伝達)の選択に迷うからわけがわからなくなる。贈るべきプレゼントさえ明快に決まれば、大きくはずれた趣向を凝らすことはないだろう。

以上がヒントである。しかしソリューションではない。なぜなら、包み紙とリボンの種類、すなわち表現語彙が少なければ悩みは解消しないからだ。 

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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