コーヒーサイズの話

行き当たりばったりで飲むコーヒーに難癖はつけない。たとえば、食後にコーヒーが付いている場合とか、時間待ちするにもその店以外に選択肢がない場合など。しかし、半世紀近くコーヒーを飲んできたから、ある程度自分流が出来上がっている。自分流を貫くには気に入った豆を買い求め、自分で淹れて飲むのが一番。休みの日に体験する他流も、なるべく味や分量も自分流に近いものを所望するようにし、そうしてくれそうな店に入る。

コーヒーそのものについてはまずまず知っているものの、カフェチェーン店のコーヒーの注文サイズの呼び方にはまったく不案内だった。理由は簡単で、レギュラーコーヒーは例外なくレギュラーサイズで飲むからだ。ぼくが想定するレギュラーサイズは、よくある普通のカップに八分目、おおよそ一杯150mlである。コーヒーが冷め切るまでにおいしく飲むにはこれがちょうどよい。ところが、ある店でメニューを見ずに「レギュラー」を注文したら、それが3段階サイズの真ん中だったことがある。はっきり覚えていないが、S(スモール)/ R(レギュラー)/ L(ラージ)のような名称だった。おそらく240mlをゆうに超えていた。あまり飲みなれない量を飲み切ったから、胃袋はダボダボ。

どのチェーン店も23種類のサイズを用意している。S店などは4種類。当初は耳慣れないショート/トール/グランデ/ベンティに戸惑った。戸惑いはしたが、飲むのは決まって自分流のレギュラーサイズだから、それはショートなのだろうと想像して注文した。他店のレギュラーの1.5倍ほどの分量に驚いたものである。経験的にはコーヒーは大きすぎないカップで飲むのが快い。快いから習慣になる。習慣になるのは、それがおいしいという学習をしてきたからにほかならない。なお、S店のコーヒーはうまい部類に入らないので、ここ何年も行っていない。


エスプレッソにシングルとダブルがあるように、ブレンドコーヒーにもレギュラーサイズとそれよりも少し多めに入ったサイズの二通りの選択があってもいいだろう。それをR(レギュラー)/ L(ラージ)と呼んでいるのは、ぼくがたまに行く3店のみ。他の店はおおむねS(スモール)/ M(ミディアム)/ L(ラージ)の3種類。ぼくにはこれが「変」なのだ。個人的な偏見だと承知しているが、飲食を質よりも量でとらえがちなアメリカ流に従い過ぎではないのか。量を求める人はやがて冷める残り半分のコーヒーに平気なのだろう。

チェーン店ではない、街の老舗喫茶店でメニューを見る。コーヒーの種類はブレンドの他にモカやキリマンジャロなどいろいろ書かれているが、サイズはぼくが言うところのレギュラーのみだ。「大盛り」などはない。だから、レギュラーサイズという名称がない。一種類のサイズしかないことに何の問題もない。店主も自信を持って豆の種類を配合して、ブレンドコーヒーを淹れてカップに適量注ぐ。最後まで冷めない分量である。もしもう一杯欲しければ追加で注文すればいい。二杯目を半額で提供してくれる店もある。

先に書いたように、自分流の「レギュラーサイズ」の注文がミディアムサイズになることも無きにしもあらず。そこで、最近はメニューのパネルなどに見向きもせず、こう注文する。「ブレンドコーヒー、一番小さいのをください」。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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