大賞・最優秀賞の意味

金メダル4個.jpg一つだけが群を抜いており異口同音の評価が下されれば、それを選べばいい。だが、評価すべき対象が拮抗することもよくある。優れているものが複数存在することは珍しくないのである。それでも審査や選考という仕事は、大賞や最優秀賞に値するものを、甲乙つけがたい苦悶の末に一つに絞ってこそ任を果たす。選ぶのが難しいからと言ってすべてを選んでいくとキリがなく、また本来の大賞・最優秀賞の値打ちも下がってしまう。

洋服にしても食事にしても何を着て何を食べるかに迷う。迷った挙句、すべてを購入したり食べたりしていては節操がない。そんなことができるのは特殊な人間に限られる。ぼくたちは、小から大に到るまで、日々選択の岐路に立って一つに絞る。決断とは一つの責任の担い方であり、外へ向かっては意思の表明である。悩み抜いた結果一つだけを選ぶのか、悩み抜いても決心がつかず複数を選ぶのか……後者は優柔不断に陥る。たった一度の例外を作ってしまうだけで、それが日常化し、無責任を正当化してしまうことになる。

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こんなことを書いた理由はほかでもない。今年の流行語大賞の話題が先週あたりから出始めたのを知り、ふと昨年の『2013年新語・流行語大賞』のことを思い出したのである。大賞を受賞したのは四語。まだ記憶に新しいだろう。

「今でしょ!」
「お・も・て・な・し」
「じぇじぇじぇ」
「倍返し」

今年の審査員の面々が誰なのかは知らない。昨年は、やくみつる、姜尚中、鳥越俊太郎らであったことを覚えている。彼らはこれら四つの大賞に落ち着くまでに相当選考に苦しんだはずである。そうでなければ、金メダルを四個も出すことはなかったはずだ。

ところで、ぼくはネーミングという任務をたまに授かる。商品のコンセプトをよく吟味し、市場からの目線も踏まえて十いくつかの案を出し、三つ四つに絞り込む。絞りきれないからその商品の名前を複数にしてしまおうなどという乱暴な決断には陥らない。甲乙つけがたくても、一つに絞る。この種の作業において何かを一つだけ選ぶというのは、別のものとの決別でもあるのだ。そこには潔さが求められるし、その潔さによって選考した理由を自信をもって論うことができる。選べないから全部などというのは、審査員の役割をまっとうしていないのである。

と、硬派な意見を述べたが、一企業が企てている新語・流行語大賞ごときに本気でいちゃもんをつけているのではない。まあ、どうだっていいのである。ぼくがいまお手並み拝見したいのは、すでにノミネートされた今年の新語・流行語の50候補から、一つだけの大賞が選ばれるのか、はたまた今年も複数が選ばれるのか、という一点である。

この小文、読者をおもてなしするものでも読者に倍返しするものでもなく、じぇじぇじぇとつぶやきながら書いたものでもない。書くなら発表前の「今でしょ!」というつもりでしたためた次第。

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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