新しさと古さと

古色蒼然とした歴史的建造物が修復されてよみがえる。たいてい新しい建築素材が使われ壁などは見違えるように美しくなる。美しくなるとは真新しくなることだ。真新しいのに歴史的。複雑な気持ちになる。真新しさが歴史の情趣をいくばくか減じるのはやむをえない。

それでも、壊して建て替えるよりはいい。歴史に敬意を表するがゆえの修復である。築地市場がなくなって豊洲市場として一変し、名も形も消えたのは無念である。少なくとも名か場所のいずれかは残るべきだった。建て替えるにしても、かつての場所に建つのなら記憶に残る。移転しても、歴史を背負った名を継承して何がまずかったのか。

かつての面影を残しながらリニューアルした街並みにずいぶん足を運んだ。金沢や飛騨高山の歴史的街並みは、出来立てのテーマパークのように思えた。建築と街並みの修復後の真新しさに失望し、そういう方法以外に何かないものかと素人ながらに思った頃がある。

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今はちょっと見方が変わった。目に見える建築と街並みの背景にある無形の歴史とエピソードが鮮やかに感受できるなら、少々目新しくてもいいと思うようになった。新しくなって歴史が薄まる遺産は、それだけの器、それだけの価値ということだろう。他方、新しくなっても歴史が色褪せない遺産がある。

先週末、鳥栖に出張したついでに長崎へ小さな旅をした。大浦天主堂は白粉を塗ったように白かった。出島のオランダ商館跡も昔とは色合いも風情もかなり違うのだろうが、17世紀の歴史シーンを炙り出してくれたし、いくつかのエピソードが手招きしてタイムスリップをさせてくれた。大した想像力ではないが、新しく修復された建物を見、生活や商売が営まれた跡地を歩いているうちに、古い物語の一編や二編が紡げたのである。

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proconcept

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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