ストレスの取り扱い

トレスが溜まった……疲れた……そうぼやいては栄養ドリンクやマッサージのお世話になる……周囲にそんな知り合いが何人かいるが、ストレスがどんなものかよくわかっていないから、ほとんど効果がない。ストレスにあらがうかストレスをバネにするかはさておき、他力でストレスを軽減しようとしているかぎり、自力で抵抗する力も順応する力も身につかない。

グリーンセンターで売り捌かれていたペペロミア。処分品で80円。不憫に思い買って帰り、すりガラス越しの西向きの出窓で育てていたら、5倍ほどの大きさまで生長し、枝分かれして葉もずいぶんつけるようになっていた。

床に落下して、左半分が欠損したペペロミア。

先日、なまくらに左手の手のひらに鉢を移した瞬間、滑り落ちて部屋の床に落下させてしまった。運悪く、鉢が逆さまになって落ちたので、ペペロミアは34割がた茎が折れ葉がちぎれた。土の半分は床に飛び散った。丁寧に拾い上げ、土を足して養生し、力を失った茎には支柱をあてがった。

元気な時の半分程度のボリュームになってしまったが、一番明るい場所に置いて水をやり、再生を願って約一週間。するとどうだろう、光の射す方向に茎と葉を向け始め、気を漲らせようとする兆しが感じられた。ストレスがバネになる様子を目の当たりにした思いである。


ストレスを解消・発散するものだととらえると、抗うという姿勢になり、それだけで余計に負担を感じてしまうことがある。現代人のほとんどがストレスを感じる時代だ。仕事のストレス、人間関係のストレス、家計のストレスが3大ストレスだと言われる。たいていストレスと闘おうとする。しかし、闘って消えたためしはない。

ペペロミアを見て、ストレスと闘ってはいけない、ストレスに順応するか、いっそのことストレスを力に変えるのがいいと確信した。日常、ストレスゆえにできていることが多々ある。たとえば明日までにやらねばならないというプレッシャーはストレスだが、それが仕事の後押しをしてくれる。根性の話などではない。人間の生物的な反応がそうさせるのだ。

今朝のニュースでノーベル賞授賞式後の晩餐会の様子が伝えられていた。ほとんどの出席者はセレブだろう。その人たちに割り当てられたテーブル上で許される動きの幅はなんと60センチ。隣席の人の腕や肘と接するような状態で、大柄の人もみんな脇を絞ってナイフとフォークを操っている。あの場の緊張に加えて、かなりのストレスを感じているはず。しかし、それが前菜、主菜、デザート、ワインの味を引き立てている可能性がある。

パリのシャルティエという老舗の大衆食堂でそれに近い経験をしたことがある。並の値段の並の前菜とステーキをすこぶるおいしく食べたのが印象に残っている。ストレスは逆縁を順縁に変える力を授けてくれる。決して抗ったり闘ったり、弱音を吐いたりしてはいけないのである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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