ヒントの仕入れ先

人は人から多くを学ぶ。他人の知識や経験を学ぶ。学びにはプラスもマイナスもあるが、マイナスだからと言って拒否することはなく、マイナスも逆説のヒントになってくれる。

人は人以外に、本からも学ぶ。生身の人間ではないが、本もある意味で人である。さらに、人は自分自身の過去からも学ぶし、自然からも学ぶ。学ぶという言い方がありきたりなら、ヒントを得るとかインスピレーションを受けると言い換えてもいい。

人は人からヒントや刺激を授けられて日々生きている。自分のことを考えてみればわかるが、既得の知識や経験が歳を取るにつれて支配的になる。やがて偏った考え方が身について型になる。このことは他人にも言えることだ。

波長が合うという理由だけで交流相手を決めてしまうと、考え方の偏った者どうしのグルーピングが生まれる。ヒントや刺激を受けるはずのお互いの関係がルーズになり、八方ふさがり状態の集団と化す。しかも、そのことになかなか気づかない。


人的交流にともなうマンネリズムは避けられない。そこで本の出番である。本を人に見立てて付き合うのである。一対一でもいいし、一対複数でもいい。前者が熟読であり、後者が併読。人と同様にいずれの読み方にも長短があるが、マンネリズムに陥りそうになれば本を閉じてしまえばいい。文句を言われることはない。

自然からの学びが少ないことを反省している。自然についての本からはヒントを多々仕入れるが、自然と直接触れる機会がいちじるしく少ない。「自然が書いた偉大な書物を学ぶことからすべてが生まれる。人間が造ったものは、すでに自然の書物の中に書かれている」というアントニ・ガウディの至言を肝に銘じている。

先に書いたように、ぼくたちは自分の過去(ひいては何がしかの記録)からも学ぶのだが、ヒントと言った瞬間、仕入先を外に置いている。思い通りにならない外部だから、ヒントを得たりインスピレーションを湧かせることに急ぎすぎてはいけない。何事も熟すのを待つ忍耐が必要なのである。

投稿者:

アバター画像

proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です