時を越えて話がつながる

自宅で資料を整理していたら古いノートがいくつか紛れていた。適当にページを繰り、一冊だけオフィスに持ってきた。今朝のことである。それがたまたま2002年のノート。元日に次の一文を綴っていた。

を進めよう。
たとえ苦しくても後退することはできない。逆戻りの「歩」などありえないのだ。
大きな進歩を遂げて身を持て余したかのような人類。本来「進歩」とは文字通り「歩を進める」ことだったはず。ゆっくりと一歩一歩前へ進む……これが進歩である。後ずさりしてはいけない。進むのである。とにかく前へ。

年初に書いた一文の値踏みをしただけで、転記したことに特に意味はない。その数ページ後に年賀状のことを話題にしている。今年の年賀状の当選番号をチェックした直後だった。

今年一番の年賀状は、何と言っても、友人のS.H.の世相批判である。彼の年賀状は毎年世相にいちゃもんをつける。たまにぼくと会ってもそんな談義ばかり。今年のテーマは「もらってうれしい年賀状、もらってもうれしくない年賀状」だった。これを年賀状で書く。もらってうれしくない年賀状を投函した者にとってはたまらない。

昼にポストに郵便が入っていた。「寒中お見舞い申し上げます」。今年はこの葉書がことのほか多い。「昨年十一月主人が六十七歳で永眠……新年のご挨拶を失礼……」。主人とはS.H.だった。ぼくのオフィスと彼のオフィスは100メートルほどの至近。近いのでいつでも会えるとお互い思っていたが、案外会えなかった。そんなものである。数年前突然倒れ、リハビリを経てオフィスで仕事を再開していたが、それもままならず、自宅にこもっていると聞いた。直近に会ってからはもう三年近く経っている。

生前の付き合いのエピソードをまじえて、奥さま宛にお悔やみを一筆して今しがた投函してきた。気を取り直して一歩進むしかない。これも何かの因縁だろうから、明日もこの2002年のノートを少し捲ってみようと思う。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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