次は何?

草木の新陳代謝が目立つ季節になった。すっかり枯れていた鉢植えのツタが、待ってましたとばかりにこの一ヵ月の間に芽を吹き枝を伸ばした。いいことである。人も店もこうありたいものだ。

ところがである。人や店が複数になると、新陳代謝は古きものが新しきものに淘汰される競争状況をもたらす。企業の管理職やスポーツチームの選手の例を見ればわかる。新陳代謝を図れば、誰かが消え別の誰かが加わるのだ。

飲食店も同じ。新陳代謝が激しい地域では新規開店と店じまいが入り混じる。自宅からオフィスへの通勤路にチェーンのうどん屋がある。二、三度のれんをくぐったことがある。「きつねうどん」というのぼりが目立つ。かけうどん、天ぷらうどん、ぶっかけうどん、肉うどんもあるが、きつねうどんを強くアピールしている。

その隣りは喫茶店だった。大通りに面している割には人通りが少なく、人が大勢入っているのを見かけたことはない。それでも、数年間営業していた。よく頑張ったほうだ。閉店して二ヵ月あまり、リフォームが始まった。通り道なので、次はどんな店になるのか? と目配りだけはしていた。


表通りから見るかぎり、和風の構えになりそうな工事の進行。カジュアルな鮨屋か割烹か……いや串カツ屋という可能性もある……蕎麦屋だけはないだろうなどと、別に興味津々だったわけではないが、思い巡らしていた。先日、やっと看板が上がった。「肉うどん」の大きな文字。まさかの麺類の店だった。店名は小さく扱われ、かろうじて判読できる程度。うどん屋の隣りにうどん屋とは予想外だった。

繁華街の雑居ビルなら、スナックやラウンジが十数店テナントで入るのは珍しくない。しかし、ここは他に飲食店が多くないエリアだ。そこにうどん屋が並んで二軒。きつねうどん対肉うどん、いずれどちらかに軍配が上がるのだろうが、ずいぶん思い切った挑戦をした新店に勝算があるようには思えない。経験に裏付けられた直感ではあるが……。

ここから徒歩10分弱のオフィス近辺の飲食店の新陳代謝は目まぐるしい。オフィスを構えて30年ちょっと。当時から営業している店は二、三を数えるのみ。ここ数年に限っても半数は入れ替わったはずである。店じまいした飲食店の後にオープンするのは、これまた飲食店である。リフォーム工事を見るたびに「次は何?」と心中つぶやく今日この頃。成熟の時代は新陳代謝激しい時代だと痛切に思う。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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