コンセプトをアイディエーションへと結実させる

「アイディエーターって何ですか?」 本ブログのぼくのプロフィールを見て、こう尋ねてきた人がいる。実は、名刺には、代表取締役、企画コンサルタント、ワークショップレクチャラーと三種類の肩書きを印刷している。その人は、名刺とブログ上での肩書きの違いに気づいたようだ。この名刺はまだ千枚以上残っているので、もったいないの精神であと二年は使うつもり。

さて、30年近く企画の仕事をしてきた。また、企画発想をテーマにしたセミナーや研修を20年近く数百回させてもらっている。コンセプト(concept) またはコンセプション(conception) は企画がらみで頻出する用語だが、アイディエーション(ideation)ということばはあまり見聞きすることがないだろう。いずれも概念(化)や観念(化)という意味を共有している。調べていただければわかるが、英和辞書では厳密に峻別した定義にはなっていない。

これまで、コンセプトを企画の拡散段階の働き、アイディエーションを企画の収束段階の働きとして勝手に位置づけてきた。「何かいいコンセプトはないか?」という場合は発想を広げている。しかし、「見つかったコンセプトをどこに落とし込めばいいのか?」となると、形にすることが課題になっている。コンセプターという和製英語が気に入らないので、これまで企画コンサルタントと自称してきた。だが、相談に乗り、課題を自社に持ち帰って熟考して提案をするという一連のコンサルティングは、こと企画に関しては賞味期限が切れてしまうと判断した。


古代ローマの剣闘士グラディエーター(gladiator) をふと思い出し、英語のネイティブスタッフに「アイディエーションということばがあるのだから、アイディエーター(ideator) は絶対OKだね?」と問えば、直感的に彼は「ノープロブラム」と言い、念のために調べてくれた。まだまだニッチなことばだが、使用事例もあることがわかった。それなら、コンサルティングからアイディエーティングへと自分のサービスを変えてみようと思い立った次第。

アイディエーターは、現場で課題と闘う人である。斬れば血の出るような実践的アイデアを、問われたその場で一番搾りして提供する。「この企画どう思います?」に対して、複数オプションを即答して、有力アイデアを即決する。とても大変だが、真剣勝負である。

知の剣闘士よろしくアイディエーターという肩書きがとても気に入っているのだが、即答即決したらお金にならないのではないかという不安が横切る。その仕組みは、これからコンセプトをアイディエーションに落とし込んで考えていかねばならない。「お願い、誰か相談に乗って!」と泣き言をこぼすわけにはいかない。