ゴールデンステート滞在記 ロサンゼルス⑤ 食の愉しみ

「食は何とかにあり」とはよく聞く言い回しだが、食材の豊富さだけが食の本分ではない。それぞれの土地で評判になっているものを口にする――それが基本だろう。食材の豊富さ、料理のバリエーション、味や凝り方に関しては、日本が世界の最高水準であることに疑う余地はない。

しかし、比較してはじめてわかるうまさなどどうでもいい。半月前に大阪で食べた寿司と数日前にカリフォルニアで食べたペルー料理の旨さを比較することにほとんど意味はない。今こうして食べている料理が、その場にいる自分にとってうまいかどうかがすべてだ。空腹度、体調、ひいては屋外か屋内か、何と一緒に食べるかなどによって味は見事に変わる。

郷に入っては郷に従えこそが食の原点。ぼくは何でも食べる。いったん食べようと決めたら、太るとか健康によくないとか考えないことにしている。そう思うときは最初から口にするべきではない。前に紹介したレアステーキは、450グラムと書いたが、実は550グラムだった。高級な部類に入るステーキだが、8ドルと聞いて腰を抜かすほど驚いた。これを完食したぼくにも座布団一枚だ。もう霜降り幻想を捨てたほうがいい。

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近くの土曜マーケット。
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ペルー料理の屋台。二番人気のチキン焼きめしを賞味。
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見慣れない野菜もちらほら。
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1.5ドルのホットドッグ。食べ応え十分。
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メキシコ産のなすび。4、50cmの驚きの長さ、大きさ。
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豊富なフルーツの種類。特に桃の品種が多い。
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COSTCO(コストコ)の陳列はすべてダイナミック。
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レジを通過した直後の壁に貼ってある「会員サービス優秀従業員一覧」。
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レジで処理する個数、スピード、ミスの少なさなどに基づいてランキングを毎日更新して発表している。
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モールのカーニバルフェアはさしずめ夏祭りか。アメリカ人と言えば「ポップコーン大好き」というステレオタイプな印象があるが、まったくその通り。一人で洗面器一杯分を食べている人がそこらじゅうにいる。
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ビバリーヒルズで食べたハンバーガー”クラシック”。
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手前がベーコン添え。右がオニオンリング。
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バーガーショップのカウンターに置かれたジュークボックス。音楽はここからではなく、店内のスピーカーから流れる。60年代の曲が多かった。ニッケル(5セント硬貨)一枚で一曲。興味を示していると、店長が硬貨を数枚置いてくれた。つまり、ただということだ。

ゴールデンステート滞在記 ロサンゼルス① ドジャー・スタジアム

ロサンゼルスは日本時間から16時間遅れ。たとえば69日(火曜日)の午前1045分は、こちらでは8日(月曜日)の午後645分。ロサンゼルス郊外、市街から南へ約時間、海岸沿いにあるランチョ・パロス・ヴェルデスの親戚の家にいる。

昨日の午後5時、ドジャー・スタジアムに出掛けた。言うまでもなく、ロサンゼルス・ドジャースのホームグラウンドである。対戦相手はフィラデルフィア・フィリーズ。途中、バスケットボールのファイナルの会場前を通ると、レイカーズファンでごった返していた。ほぼ同時刻のスタートなのでどっちを観戦するか迷ったファンもいるだろうが、レイカーズのほうは数万円にまでチケットが跳ね上がっていると聞いた。

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さて、スタジアムで陣取った席はドジャース側、つまり三塁側ブルペンの少し上。一塁側だと直射日光を浴びるが、ちょうど陰になった直後の場所で5イニング頃からは冷えてきた。3イニング終了時点で名物のホットドッグ「ドジャードッグ」を頬張る。ロサンゼルスに来て過食気味なので夕食はこれとコーラだけ。ぼくの前の列の四人家族などは試合もそっちのけで、次から次へと飲み食いしていた。

野次はそこそこあるが、「かっとばせ~」というのがない。一球ごとに電子オルガンが鳴ったり拍手が起こることもあるが、一投一打の一瞬はシーンとする。おまけに申し訳程度のバックネットが少しあるだけで、ぼんやりしているとネット越えのファウルボールが危ない。甲子園のようにファウルグラウンドが大きくなく、観客席のすぐ前に三塁コーチが立っているほどの接近感。ファウルボールは日本の倍は飛んでくる。

3回裏、数メートル左手にファウルボールが飛んできた。一人がはじき、そのはじいたボールを取ろうとした直前の列、すなわちぼくと同列の三、四人向こうの男性がこれまたはじき落とす。その落としたボールがバウンドせずにちょうどぼくの足の下に転がってきた。もちろんこのチャンスを見逃すはずもない。立ちもせず、足元のボールを拾うだけなのだから。日本から旅行で来た者にこんな漁夫の利があっていいものか。

年間チケットを購入するほどのドジャースファンで20年来通い詰めても手に入れていない人がいるらしい。試合後にオフィシャルショップでシャツか帽子でも買おうと思っていたが、そんなものどころか、千載一遇の宝物となった。

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駐車場から臨むスタジアム。
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外観同様、球場がコンパクトに見える。ファウルグラウンドが狭いせいだ。 
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フィリーズ側に若干空席があるが、ほぼ満員。
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絶好の席に陣取るもチケットは75ドル。
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レフト側のビジョン。
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KISS CAMタイムには画面に映った人がキスをする(ことになっている)。
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チャンスが到来すると、観客は一斉に立ち上がることもある。日本ほどではないが……。
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ドジャースはヒットを量産するものの、手に汗握る場面はなかなかやって来ない。
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敗北濃厚ゆえ、9回には出口側へ移動して観戦。ここもなかなかの位置どりだ。
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希少な記念品になった、微妙な汚れのついているファウルボール。