二字熟語で遊ぶ

二字熟語 上下逆転図.png長い出張中は、講演や研修の合間にテキストの草稿をしたためたり本を読んだりする。いずれも急ぎのミッションではないから、集中力は長く続かない。いきおい、カフェに入ってぼんやりする時間が増える。手元にはいつものノート一冊。

つい先日、ふと目にした文字から連想が始まった。何のことはない、「実現」をひっくり返すと「現実」、というような関係をもつ二字熟語探しである。あっという間に、30ほど書き出したが、そこで終わっては芸がない。気がつくと、おもしろおかしく例文が作れないかと思案し始めていたのである。できれば例文も川柳仕立てでと欲張ったが、それは仕事以上に疲弊しそうなのであきらめた。

【金賞と賞金】
(例)名誉と表彰状だけの「金賞」よりは、何等賞でもいいから「賞金」のほうがいいよね。

現金な話だが、賞を授与してきたぼくの経験からすると、あながちそうでもない。旗とカップの店に注文した千円そこそこの金メダルを首にかけてあげると、優勝者は大喜びしたものである。
【便利と利便】
(例)「便利」な文明の利器のことごとくが社会の「利便」性につながるとはかぎらない。

便利がモノについての有用性なのに対して、利便のほうはやや抽象性が高い。便利に利益の意味は小さいが、利便性には便利と同等の利益がともなうかのようである。
【段階と階段】
(例)「階段」を一気に駆け上れば上階には行くだろうが、「段階」を追うことだって大切なんだよ。

この二語は大いに重なっているが、階段は無機的でアナログ的に続く。段階には技術や技能の力量が等級として表現される。「そんなに上を目指しても、きみの今いるところはこの程度の段階なんだからね」という具合。
【体重と重体】
(例)大事故が起きると「体重」の重い人ほど「重体」になる可能性が大きい。

この二語は、それぞれ人体の重さと身体のケガの症状を示す。まったく意味が変わる。しかし、教訓とせねばならないのは、体重の増加はある意味で重体なのかもしれないということだ。両者をつなぐのがメタボリックという概念だろう。
【出家と家出】
(例)彼は勇んで「出家」したつもりだったが、家族からは「家出」捜索願いの届けがあった。

これとは逆に、家出人の安否を気遣う家族は、まさか本人が出家したなどとは考えないだろう。しかし、どんな形であれ、せめてどこかで生きていてほしいと願い続け、出家していたと知れば一安心である。