本棚に入れたままだったのが2冊、最近古本市で買ったのが1冊。仕事もあるので隅々まで丁寧に読む時間はない。ジャンルは違うし大笑いするわけではないが、いずれも「おもしろい」。3冊共通のテーマにふさわしい。
📖『ぜんまい屋の葉書』(金田理恵)
おみくじは人がつくります。
それを人が引きます。
その時神さまどっこいしょと乗り出します。
「あんたはこれ引きなさい。中吉かい、またおいで。」
著者が年賀状や暑中見舞いを出しているかどうか知らない。しかし、上記のような小話や季節の挨拶や視点を毎月葉書にして、活版印刷で一枚ずつ印刷して知人に送っている(それらを本にした)。活版印刷の味を生かしたイラストや柄模様も添える。文章がおもしろい。わがブログもそろそろ「おもしろい」に特化する時かもしれない。
📖『ことばの国』(清水義範)
『永遠のジャック&ベティ』で知られる著者の本は何冊か持っている。一冊も完読していないが、気ままにページを繰れるエッセイや小説なのでちょっと空いた時間に読むにはありがたい。
ことわざパロディに20ページほど割いている。創作ことわざに手を染めたことがあるので、ぼくのツボである。本書の「二兎を追う者は目がいい」はまずまずだが、鬼奴の「二兎追う者はウサギ好き」には及ばない。「餅は餅屋」のパロディがバカらしくておもしろい。
餅は餅や
そんなこともわからんのか。餅をバームクーヘンだとでも思ってるのか。アホ。
〔使用例〕
「だから、餅は餅や。まだわからんのか」
📖『街に煙突があったころ』(清水 潔)
1988年発行の本なので、それ以前の風俗史である。つまり、今から見れば40年、50年、時にはもっと昔の昭和まで遡る。四十いくつかの「もの」「ファッション」「慣習」の中から、タイトルになった煙突を差し置いて栄養ドリンクを抜き書きする。
「リポビタンD」(大正製薬)。昭和三十七年四月に登場し、それまでのアンプル剤の病的なイメージを破る(……)ビン詰は、十分世間の注目を引いた。
小さな巨人、オロナミンC(大塚製薬)が発売されたのが昭和四十年。リポDは認可を受けた「医薬品」だが、オロナミンCは(……)医薬品から外された。
一見残念な扱いを受けたように見えるが、これが幸いした。清涼飲料だからオロナミンは薬局以外でも取り扱え、販路はリポビタンの5倍になったのである。
リポビタンD、オロナミンC、アリナミン、グロモント、ユンケル、タフマン、リアルゴールドなど、錚々たる顔ぶれのドリンク剤。ネーミングが力強い。勢い余って昭和の終わりには大丸東京店にドリンク剤専用バーまでできた。ドリンク剤小史はおもしろい。