ヴァイン・イン・フレイム/カベルネ・ソーヴィニヨン 2018 ブドゥレアスカ。
初めての赤ワインの銘柄。まだ抜栓していない。最後尾のブドゥレアスカに「ブドゥ」が入っているのは偶然である。これはワイン生産者の名前。場所はルーマニアの南部。外国のワイン生産者が日本に合わせて名付けしたのではない。
デパートで見つけた一本。日本ではフランスとイタリアが圧倒的な流通量を誇り、次いでスペイン、ドイツ、チリ、南アフリカ、オーストラリアあたりが続く。メジャーではないジョージア、ハンガリー、ブルガリアなどのワインをデパートや品揃えのいいワインショップで見つけるたびに飲んでみた。飲んでいなければ親近感を覚えないが、少し飲み慣れるとコスパの良さに驚く。
そして、ついにルーマニアである。どんな香りでどんな味か。専門家のレビューなど読まずにさっさと飲んでみればいいのに、「初銘柄のルーマニア」にそそのかされてつい評判を知りたくなって、ワインサイトを覗いてしまったのである。
カシスやブラックベリー、爽やかな新緑のような香りに、黒胡椒のニュアンス。酸は心地よく、しっかりとした果実味にまろやかなタンニンが感じられる。
爽やか、ニュアンス、心地よい、しっかりとした、まろやかな……香りや味はいつの時代もボキャブラリー不足である。既知の表現の組み合わせから未知の香りと味をイメージすることはできるが、再現性は頼りない。
自分が感知した味とすでに書かれたコメントが違うと、「あれ?」という感じになる。大いに違っていると、不快感や不安感を覚えるかもしれない。そして、自分の味覚にがっかりしないように、感じた印象が実は書かれたコメントに近いと思いなすようになる。さて、近々このワインを賞味するつもりだが、はたしてそのような――認知的不協和的な――味覚とことばの強引な辻褄合わせすることになるのだろうか。