特価チーズの品質を巡って

「品質」はモノの良・不良を問題にする時に使われる用語。「品質がねぇ」などとつぶやき始めたら、何かしらよろしくない気配が察知されている証拠である。

製造過程で不良品を出さないように工夫することを「品質管理」という。そして、製品が顧客に売られる時および売られた後「いついつまで」の品質の良さを約束することを「品質保証」という。品質の管理と保証はセットになっている。

チーズ専門商社のアウトレットで定価1,000円のフランス産のチーズが299円で売られていた。価格ラベルに「品質管理の為」と書かれている。この6文字の裏には記述されなかったメッセージがある。想像してみた。

「お客様、店側で品質維持しながら在庫を保存してきましたが、そろそろ賞味の期限が近づいてきました。よろしければ、破格のお値段でご紹介します。これから先、この品をお客様にバトンタッチしたいと思います。なお、私どもの手を離れた後は、どうか自己責任にて保存または召し上がっていただきますようお願い申し上げます」

誤表示や偽装を見逃してはいけない。しかし、安全で美味で安価なら「品質管理の為」という不器用な表現の揚げ足を取ることもない。前向きかつ好意的に検討してあげてもいいのではないか。

フランス産のまずまず上等なヤギのチーズが70%オフなのである。「品質管理の為」は誰にでもわかる表現ではないが、悪だくみではなく、何かよいおこないをしているように聞こえる。何と言ってもコーヒー1杯よりも安い値段なのだ。買って今夜か明日に食べてしまえばいいではないか……こんなふうに思ってしまう。

但し、覚悟もいる。「うまくて安い」は実感しやすいが、人の舌は必ずしも危機管理に優れているとは言えない。鼻でしっかり嗅ぎ、次いで舐めてみて安全だと判断しても、やっぱりそうではなかったということは12時間後の腹痛や下痢でわかる。時には死亡に至ってはじめて安全ではなかったことを知る。知るのは本人ではなく、本人以外の誰かである。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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