■「迷たら麺、迷わんでも麺。ノーメン、ノーライフや!」
■「個性と言うか、コンセプトと言うか、麺にもいろいろある。そんな話をしよう」
■「麺の個性? うまいの一言で十分やろ」
■「それは粗っぽい。饂飩はうまい、蕎麦はうまいだけでは特徴が言えていない」
■「全種類の麺で特徴探しは無理。うどんとそばとパスタでどうや?」
■「似て非なるライバル関係のうどんとそばは比較しやすいが、種類の多いパスタは絞らないとダメだろう」
■「パスタ代表としてマカロニを指名!」
■「いいねぇ。饂飩と蕎麦も相手に不足はないはず」
■「饂飩と蕎麦とマカロニ。三つ並べたら、饂飩が普通と違うか」
■「勝ち負けじゃないから、ノーマルでいい。現実的で常識的で親近感があるのが饂飩の良さ」
■「マカロニはお調子もんやな。笑わせる。対して蕎麦はクソ真面目」
■「言い換えると、マカロニはドラマチックで、蕎麦はドキュメンタリー」
■「蕎麦は知的やなあ。どこまでも理性的。データもエビデンスも持っとるような感じ」
■「マカロニは正反対。感情的で印象を重視している」
■「マカロニはちょっとセクシーや。さすがラテンの血を引いとる。蕎麦はプラトニックに命を賭けとる。人として見たら面白味に欠ける」
■「なんだかマカロニと蕎麦の対抗戦みたいになってきた。饂飩の話が出てこない」
■「それが饂飩のええとこや。夢ばっかり見てるマカロニは幼いと饂飩は思とるはず」
■「饂飩の良さは中庸にあり、か。愉快と真面目の間、理性と感性の間、硬派と軟派の間……という具合」
■「硬派と軟派の比較なら、蕎麦が硬派でマカロニが軟派で決まりや」
■「饂飩と蕎麦の類似性って、ブレない型があることだな。マカロニは型破りだから」
■「いやいや、型を破って何百年も経ったんやから、型破りがマカロニの型なんや」
■「なるほど。マカロニは熱い生き方をしてきたわけだ。それなら蕎麦はクールに生きてきた。で、饂飩はどっちにも偏らず中道を歩んできた」
■「蕎麦打ちの性格が蕎麦を作ってきたのとは違う。蕎麦の個性が蕎麦打ちを育ててきたんや」
■「饂飩の打ち手は饂飩の影響を受け、マカロニ職人はマカロニから学んだ……こういうことかな?」
■「知り合いにマカロニみたいなやつがおるわ」
■「コンセプト雑談、そろそろこのあたりでまとめとするか。一覧表作って、蕎麦でも食いに行こう」
■「そやな。軽く一杯となると、饂飩もマカロニも蕎麦には勝てん」