備忘録の備忘力はどの程度?

万が一「何か」を忘れた時に、その何かを思い出させてくれるのが備忘録。忘れたり思い出したりすることに先立って、まず備忘録に書きとめておかないといけない。備忘録を失くせば記録はなくなり、備忘録をめくるのを怠ると記憶は再生できない(そうそう、忘れないようにとカレンダーに書き込んだアポの予定も確認する必要がある)。

備忘録に書きとめておくと頭の片隅に残りやすくなる。しかし、何年も前のことや必要に迫られていない「どうでもいいこと」はやがて忘れてしまう。時々、備忘録を見るがメモを書いた理由がわからないことがある。忘れても別に困らないことがいっぱい書いてある――備忘録とはそういうもの。どうでもいいことなど書かなければいいのに、人はどうでもいいことにこだわる生き物なのだ。

出典や見出しを書き添えていないと、メモが意味を失ってしまうことがある。下記に紹介するのは、文字や行間から意味を汲みとらないと、なぜ書きとめたのかを思い出せない断片的実録メモである。


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2020115日 わが国最初のコロナ感染者
2020年115日 高知、牧野植物園
2020年126日 高津神社で梅の観賞
2020年211日 京都(平安神宮~白川)散策
2020年215日 ディベート大会

㊟ すべての月日の前にわざわざ「2020年」と書いているのが妙。続けて何かを書こうとしたに違いないが、思い出せない。

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チキンビリヤニ
マサラドーサ
ミックスタンドリー
ポークビンダルー
ベジタブルカレー
チキンカレー
ドライベジタブルカレー
マトンカレー
サラダ
ラッシー

㊟ ひいきにしている南インド料理店で初めて注文した土曜スペシャルランチのラインアップ。おかずがたくさん付いていた。明らかに備忘のためにおかずの名称をきちんと書いたと思う(特にマサラドーサとポークビンダルー)。その後何度か食べたので、ビリヤニ単品が1,200円だと知り、スペシャルセットの1,800円がお得だということを知った

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モタレ=トリの一つ前の出番(別名「膝変わり」)
トリ食いのモタレ
シバリ=トリの二つ前

㊟ 「米朝と幸枝若」の対談の中に出てきた専門用語をメモしたのを覚えている。トリはともかく、モタレとシバリをどこかで使ってみようとした魂胆が見透かせる。

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痛狂つうきょうは酔わざるを笑い、酷睡こくすい覚者かくしゃを嘲る。
物に定まれるしょうなし。人なんぞ常に悪ならん。

㊟ 前後のメモに毎日新聞の切り抜きや「高野山の名宝」を観た話があるので、おそらく空海の言葉を書きとめたのだろう。知ったかぶりするにしては、ぼくごとき才では荷が重い。

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本の修復を依頼する男性:「伝統を守ることが私たちの人生なのです」。
仕立て屋:「伝統的な背広のスタイルを守る。流行は追わない」。

㊟ この一節を転記しているうちにフィレンツェの伝統職人をテーマにしたテレビ番組であることを思い出した。不完全な備忘録であっても、ページを繰って読み返しているうちに記憶を辿れるものである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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