「ノート」は多義語だが、ぼくたちはほぼ「メモする、書きとめる」という意味で使っている。わが国では「キャンパスノート」や懐かしい響きのする「帳面」もノートと呼ぶ。英語で″note”はメモのこと。キャンパスノートや帳面なら″notebook”と言わねばならない。
いま英語のノートはメモのことと書いたが、ノートは文脈によって意味を変える。動詞のnoteには「気づく、注目する」「言及する」「書きとめる」などの意味がある。名詞の場合は「筆記、メモ、覚書、注釈、短い手紙」「紙幣、手形」「語調、調子」「音、音符」「重要性、著名、注目」などとさらに多義を極める。
いろんな体裁のメモ専用の手帳やノートブックを使ってきた。ここ十数年は、買ってあまり使っていなかったシステム手帳を復活させてアイデアや文章を記している。メモをまとまって書いたり編んだりしたものが「手記」や「手稿」。『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』は元のイタリア語では″Scritti di Leonard da Vinci”。英語になると″The Notebooks of Leonardo da VInci”で、やっぱりノートブックになる。
メモを取るにしても残すにしても紙片に記すことが多い。紙片はまとめにくいし、まとめたとしても散逸しかねない。一冊のノートブックを使うほうがメモを生かすことができる。
一般的にメモを記す場合は「ノートを取る」という。これは誰かが言ったことを記録しているイメージだ。自ら気づいたことや考えたことを習慣的に記す場合は「ノートをつける」や「ノートに書く」。ノートに書くと言えば「愛用のノートブック」という感じがする。
ノート術についてよく聞かれることがあるが、好きなように書けばいいと思う。大切なことは、なぜ書きとめるかという点。忘れないためではない。後日読み返すことを前提にして書いているのだ。ノートは何度も読み返しては新たな気づきを付け加えて更新することに意味がある。もう一点は、知を一元化して統合しやすくしておくため。つまり、一冊のノートブックに書くことが重要なのである。