外出自粛してテレワークを! と言われるが、4月は一日たりとも休まず出社した。宣言に逆らっているわけではない。
理由は三つある。一つ目、幸いなことに間断なく仕事を受注している。二つ目、自宅からオフィスまで徒歩なら10分、自転車だと5分。電車通勤の密と無縁。三つ目、オフィスの仕事インフラに比べて、自宅には廃棄予定のWindows7のノートパソコンとのろまなプリンターのみ。在宅では仕事がままならない。
なお、得意先の発注担当者がテレワークゆえ、仕事がスムーズに運ばない。途切れて隙間の時間が生まれる。そんな時間には本を読んだりブログを書いたりしている。
【実名と名実】
(例)「実名」とは名のことであるが、「名実」は名と実から出来ている。だから「名実ともに」と言うことが多い。
仮名や偽名と二項対立の関係にあるのが実名。実名が名のことだからと言って、太郎や花子だけでは困る。実際の姓と名でなければならない。なお、「名実ともに」と言う時の名を匿名にすると値打ちがなくなる。
【身分と分身】
(例)社会の約束事に基づいて必要書類を取りまとめてどうにかこうにか「身分」を証明することができた。しかし、各種書類が自分の「分身」だとはとても思えない。
人間は身分や地位が高くなると足元が滑りやすいとタキトゥスが言った。その人間が分身の術を会得したなら、分身の方の身分や地位を低めにして、共倒れにならないように保険をかけておくのがよい。
【線路と路線】
(例)廃線でないかぎり、「線路」があれば「路線」の名前がついているはず。しかし、路線の名があっても、必ずしも線路が通っているとはかぎらない。
わが街ではメトロとバスの路線の重複を是正するために、バスの路線がかなり減らされた。バス路線を減らすのは簡単だ。バスを走らせなければ路線は廃止できる。
【類比と比類】
(例)筆を誤る弘法と木から落ちる猿は「類比」の関係を成すが、弘法大師は「比類」なき固有の存在なのに対して、猿のほうは特にこの猿でなければならないというわけではない。
一方が固有名詞で、他方が普通名詞なので、正確に言うと、ぴったりの類比ではない。「弘法も筆の誤り」に対しては、「忠犬ハチ公も飼い主を忘れる」というレベルの類比にする必要がある。
【空虚と虚空】
(例)いずれも何もない状態なのだが、「空虚」は価値や拠り所など心に関わり、「虚空」は物質や空間に関わる。
色も形も何もない空間を想像するのは難しい。しかも、それが久遠に続くとなれば何がなんだかわけがわからなくなる。では、存在する中身や価値なら想像できるのか。こう問われると、それも心もとない。
シリーズ〈二字熟語で遊ぶ〉は二字の漢字「AB」を「BA」としても別の漢字が成立する熟語遊び。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になる場合がある。その類似と差異を例文によってあぶり出して寸評しようという試み。なお、熟語なので固有名詞は除外。