イタリア紀行12 「エトセトラの魅力」

フィレンツェⅥ

ルネサンスは14世紀から16世紀にかけて興った文芸復興。“Renaissance”と綴るが、実はこれは英語だ。発祥の地イタリアでは“Rinascimento”(リナシメント)と言う。ルネサンスの香りは街のどこからでも漂ってくる。にもかかわらず、これまでメジャーな場所ばかり紹介してきたのは、ひとえにその他の写真を撮り損ねたからに他ならない。

観光客気分のあいだはどんな被写体にもカメラを構えるが、数日経って街の光景に自分自身が溶け込んでくると、次第にカメラ離れをする。カメラと同時に地図もホテルに置いてくるようになる。超有名な名所から、市民が生活をしている場所へと散策経路が変わる。建物の2階部分の装飾や大きな門扉のドアノブや工房の水道の蛇口などにも視線を注ぐようになる。

サンタ・クローチェ地区には『神曲』を書いたフィレンツェの詩人ダンテ・アリギエーリの生家がある。比較的閑静な広場に面するのは、格調高いファサードのサンタ・クローチェ教会。サン・ロレンツォ地区へ足を伸ばせば市内バスの発着に便利なサン・マルコ広場と同名の美術館。今は美術館になっている15世紀の捨て子養育院はルネサンス初期の建築で、ブルネレスキが設計を手掛けた。このヨーロッパ最古の孤児院は、身分を明かさずに子どもを預けることができた「赤ちゃんポスト」だ。

サン・マルコ広場から市内バスで約25分、標高300メートルの丘にはフィエーゾレの街がある。そこはフィレンツェの街を一望できる抜群のロケーション。前回も今回も行ってみたが、残念ながらいずれも花曇りの天候で、鮮明な絶景とまではいかなかった。とても小さな街で人影もまばらだが、紀元前8世紀に住み始めたエトルリア人の文明の面影に加えて、その後のローマ時代の遺跡も残っている。

フィレンツェの良さはフィレンツェだけにとどまらない。何と言っても、日帰りであちこちの街へのアクセスを可能にしてくれる。引き続き次回からトスカーナや周辺の街を取り上げてみたい。 《フィレンツェ完》

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捨て子養育院から臨むドゥオーモは合成写真のよう。
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噴水の後ろの柱とアーチに目を凝らすと、メダイヨンと呼ばれる青色のレリーフのメダルが嵌め込んである。
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ブルネレスキが設計した孤児院。
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サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の構内の発着案内掲示板。
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教会へ続くフィエーゾレの坂道。
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瀟洒な佇まいのサン・フランチェスコ教会。
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フィエーゾレから眺望するフィレンツェの街。花曇りの景色中央にドゥオーモが薄っすらと見える。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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