サンフランシスコと大阪は姉妹都市関係にある。姉妹都市だからといってどこかしら雰囲気が似ているなどということはない。しかし、この街にさほど違和感を感じないのは、通りや賑わいや店舗の数などに日本の大都市構造と共通点があるからだろう。もしサンフランシスコに坂とケーブルカーがなかったら、どこにでもある街並みと変わらない。地形と、その地形に合った乗り物がこの街の生命線になっている。
海岸線も特徴の一つだ。ピア39にやって来ると、この街が神戸に酷似しているように見えてくる。正確なことはわからないが、神戸のモザイクがここを真似たのではないか。この推理が間違っているのなら、サンフランシスコのピア39のほうが神戸を真似たに違いない。しばし目を閉じ、再び開けてみると、神戸にいるような錯覚に陥る。
昨日パスした屋台でシーフード料理を食べる。大人の片手より一回り大きいパンの中身をくり抜き、その中に具だくさんのクラムチャウダーを注ぐ。もう一品、イカ(caramari)のガーリック風味のから揚げ。二つで18ドルくらい。「うまいかまずいか」の二択なら、うまいの欄にチェックを入れる。だが、「安いか高いか」となれば微妙だ。18ドルもするならうまくて当然という感じがする。食に貪欲な日本人にとって、フィッシャーマンズ・ワーフの名物料理の費用対効果は普通である。
少し沖合いにアル・カポネが収容されていた監獄の島アルカトラスが見える。遊覧して上陸できるが、所要4時間と聞いてやめた。当初の予定通り海岸沿いを歩き、ハイド通りに入ってブエナビスタ・カフェ(Buena Vista Cafe)の前に出る。アルコールの入ったアイリッシュコーヒーで有名な老舗店だ。競馬ファンならずとも聞き覚えがあるかもしれない。桜花賞とオークスの二冠に輝いた最強牝馬の一頭ブエナビスタはスペイン語で「すばらしい景色」という意味である。
この店の前をさらに上がっていくとリーヴンワース通りと交差する。ここまでの道は冗談抜きに心臓破りの坂だ。その坂から左を見下ろせばロンバード通り。ここが「世界で最も曲がりくねった通り」と呼ばれる曲者の坂。続きは次回。