単色スケッチをAIが着彩したら……

30数年前、古い映画のマスターフィルムをデジタル技術で高画質に修復して作り直せるようになった。デジタルリマスターという。色彩が再補正されて鮮やかによみがえる。近年は4K解像度に対応するリマスターが主流になり、今ではAIによる自動化でさらに飛躍的に解像度が高まった。

あまり詳しくないが、アニメやイラストの専門AIに任せれば、人の手になる線画と下塗りをベースに着彩してくれる。ぼくのようなアマチュアは、拙い絵を描くにしても自分でスケッチやデッサンをして自分で色を塗りたいと思う。特に透明水彩画は、着彩で台無しにしてしまうこともよくあるが、それも絵画というアートだと割り切っている。

どこの街だったか思い出せないが、イタリア旅行中にスケッチした1枚の絵が残っている。この単色のペン画を示して「この絵を着色して」とAIに指示した。それ以外は、建築様式も時代も希望の色も一切情報を提供していない。30秒もしないうちにAIはリマスターしてみせた。それがこの絵だ。

濃淡や陰影の仕上げがよく出来ているので驚いた。基本はぼくのスケッチの線を生かしながら、バーントシェンナとバーントアンバーの2色を基調にして左手の建物の窓枠を造作している。少し赤みがかった空色も建物の色と合っている。

ならばとばかりに、もうひとつお願いすることにした。パリはモンマルトルで撮った写真を元にしてスケッチした1枚。空と通りに軽く色をつけたままで放っておいた絵。

AIには「この絵を水彩画風に着色して」とだけ指示した。実際にこの目で見た街の光景がかなり写実的かつ物語性を感じさせるかのように現れた。

 

 

何という創造力、いや想像力だろう。あまりディテールに関心のないわがラフスケッチをかなりリアルに表現しているではないか。AIとの共作アートに原作者の痕跡を残すのは難しいかもしれないと、この絵を見て思った次第。