ワインに関するモノローグ(後編)

🍷 ワインそのものへの関心よりも、料理とワインの相性への関心のほうが強い。ワインを飲むのは少量で決して痛飲しない。ワインの本を読んで知識を仕入れると、ワイン専門店やデパートのワイン売場に行き、試飲してソムリエの話を聞く。3種くらい試飲すると、よほど口に合わないかぎり、お礼の意味で1本買う。

🍷 『ヨーロッパワイン美食道中』という本に次のくだりがある。

「味覚的に合うということは、いったいどういうことなのだろうか。いまある料理を一口食べて噛みながら、口の中にワインを含んで混ぜてみる。よく合ったときは大変おいしく、料理もワインも一段とうまく感じ、食欲も増進してくるだろう。」

この本はワインの適温に応じた冷旨系、中間系、温旨系の分類についても言及している。ワインと料理のペアリングよりも、ワインの個性に応じた適温を整えるほうが難しい。ワインの保存に関してはこれまで無頓着で、自宅の冷暗所に置きっ放し。冷暗所と言っても夏場は30℃を越える。専門家の話を総合して、遅まきながらワインセラーが必需品だと気づき、今年の夏場に備えて検討しているところだ。

🍷 以前はワインショップからアウトレットセールの案内が届くたびに覗きに行った。訳ありワインが所狭しと並べられ、たとえば定価1万円の訳ありワインが4,000円程で売られる。訳ありのほとんどが汚れや剥がれなどのラベルの瑕疵かしであって、ワイン自体に問題はない。ある日「これは絶対お買い得!」と勧められたのがブルゴーニュのピノノワール種の格上。フランス語で「エチケット」と呼ばれるラベルには次の情報が記されている。

2011 HarmandアルマンGeoffroyジョフロワ
GevreyジュヴレChambertinシャンベルタン 1er CRUプルミエクリュ LA BOSSIEREラボシエール monopoleモノポール
(ヴィンテージ2011年
、生産者アルマンジョフロワ、ジュヴレシャンベルタン村1級畑ラボシエール専売)

ソムリエによれば定価はたしか12,000円。それを60%OFFで買い、飲み頃はもっと先と考えて7年間置いていた。ワインセラーがないから、ほとんど適温コントロールをせずに猛暑の夏を7回過ごした。著しく劣化して死んだも同然かもしれない。先週、手遅れだと承知の上で冷蔵庫の野菜室に入れ、翌日に常温に戻して抜栓した。コルクの傷みなし。香りに異変なし。ピノノワールなのに重厚で微かな甘さと酸がほどよく調和している。三夜連続グラス1杯飲んだ。二日目と三日目は味変して旨味も増したような気がする。この味は熟成が進んだものなのか、やっぱり温度の影響を受けて本来の味でなくなっているのか……状態のいいものと比較するすべはない。比較するなら同じものをもう1本買い求めるしかない。

🍷 2011年ヴィンテージが日本のサイトでは出てこない。どうやら希少になっているらしい。さらに調べたが2011年がなかなかヒットしない。しばらくしてフランス人評論家のサイトでやっと見つけた。現在の価格も記されていた。数字を見て驚いた。な、なんと59,759円! 国内サイトでは2018年ヴィンテージで15,000円くらいなので、何かの間違いかもしれない。いや、きっと間違いだろう。しかし、たとえ間違いだとしても、この金額を一度見てしまうと「ワインは変わる」。ワインとは、瓶からグラスに注いで香りと味を愉しむものだけにあらず、同時に観念であり相場でもある。