なかなか口に入らない食材や料理と旨いさかなのご馳走をどう言えばいいか。数年前まで、勉強会の後に自炊する食事会を「美食倶楽部」と呼んでいた。美食には贅沢感が強く出るので、そう呼びながらもしっくりきていなかった。耳慣れないが、四字熟語の「珍味佳肴」がぴったりの表現だと知り、気に入っている。
グルメや絶品を強調しなくてもいい。また、料理に高級食材を使う必要もない。おいしいご馳走は人それぞれだが、「安くておいしい」がご馳走の基本だと思っている。そもそも料理単品の力で舌鼓が打てるわけではない。季節感や旬の素材や酒とペアリングしてこそ食は愉しさを増す。今年2月にいただいた秀逸コスパの料理をまとめてみた。
🥢 牡蠣フライの「かつとじ」
牡蠣フライはマヨネーズかタルタルソースで食べるのが相場だが、親子丼のアタマのようにとじると別の料理になる。ご飯に乗せず、ご飯と別のかつとじがいい。これが主菜の750円の定食で、他に具だくさんの味噌汁・小鉢2品・ライスが付く。
🥢 鮪のカマ焼き
鮪は頭部がうまい。頬肉、目玉、脳天、カマにはそれぞれ独特の食感がある。夕方に値引きシールが貼られて250円になったカマを焼いてみた。まるで牛カルビの焼肉だ。珍味と言うにはありふれた部位だが、ステーキに見立てて焼けば赤ワインに合う佳肴になる。
🤌 有頭エビの串揚げ
頭が有ると無しではエビはかなり違って見える。頭のないのは食べやすいが旨味が物足りない。頭に旨味のほとんどがあるエビは有頭で料理してこそ値打ちがある。そして頭も丸かじりする。やや大ぶりの有頭エビの串揚げ、 1本350円。オプションでアスパラガスを添える。
🤌 鯛皮の素揚げ(鯛皮せんべい)
鯛皮のにぎりはポン酢を垂らしてよく食べるが、この素揚げは二度目の珍味である。左手にはハイボール、右手の親指と人差し指で鯛皮をつまむ。薄塩の味付け。ウロコ取りがあるので自分で調理するのは大変だが、店なら300円で食べられる。
🍴 牛肉スジとキノコのトマトソースパスタ
牛肉のスジをやわらかく煮込み、大きめにゴロゴロっと盛り付ける。サラダとパンとエスプレッソが付いて950円。牛ミンチのボロネーゼに比べて遜色なく、むしろ野性味と迫力で上回る。
🥢 播州百日どりの肝と心臓のコンフィ
ブロイラーの倍近くの日数をかけて育てるだけあって内臓は濃厚な味わい。オリーブオイルでほどよく低温加熱してオイル漬けしたまま保存する。濃厚で重い赤ワインが合う。これも400円くらいで出してくれる。調理が簡単なので、新鮮な肝と心臓が手に入れば自炊可能。
🥢 数の子のくずれとワカメの和え物
カステラの端っこ、黒毛和牛の切り落としに存在意義があるように、数の子のくずれにも出番がある。いや、くずれていない数の子には向いていない。無理にくずしたのではなく、取り扱い中にくずれたものがこの料理に抜擢される。たっぷり盛って450円。