映画で英語を勉強した頃

移転に向けてまだまだ断捨離が続く。パソコン時代のはるか前に手書きで綴った文章の量がおびただしい。ワープロ時代に入ってからもいろいろ書いたが、書いたことを忘れてしまっている。この先しばらく、そんな再発見の雑文に筆を入れて本ブログに転載しようと思う。


“Love Story”(邦題『ある愛のうた』)の中で使われた一つの単語を巡って19903月に書いた小文がある。

「ケア(care)」ということばはすっかり日本語として定着した。たとえば、「ケア・サービス」と言えば、英語を知らない人でも介護や家事サービスのことだとわかる。

日本語に外来語が増えつつあることには寛容だが、ある言語から別の言語に単語を移行する場合に、どうしても元のことばの厚みが削ぎ落とされてしまう。英語のcareには、①心配、気苦労、②世話、看護、保護、③注意、心遣い、④一時預かり、保管、⑤関心事、注意すべきこと、などの意味がある。

映画“Love Story”の中で使われた何気ない“I care.”という表現が印象に残っている。日本語の字幕は「愛してるわ」だった。「愛してる」は、日本人の愛情表現としては馴染みにくい。そもそも“love”が「愛している」で言い得ているとも思えない。さて、この映画では、ピアニストを目指すインテリな女性ジェニーと大富豪の御曹司オリバーが出会う。

貧しい移民の娘ジェニーは身分の違いを気にしてオリバーの誘いを警戒する。オリバーはジェニーに“You don’t care me!”(ぼくのこと、愛してないんだ!)と叫ぶ。世話、看護、保護というケア(care)が、この映画の一場面で使われると愛情表現寄りになる。英語圏の人たちは“I love you”を連発すると思いがちだが、“I care you”は親近感もあり頻度も高い。

日本語の「世話、看護、保護」という意味のケアと、愛していると翻訳される“love”の間に接点は見い出しにくい。前者は物質的現象と捉えられやすく、後者は多くの場合、男女間の恋愛感情と限定されがちだ。この映画の“care”には何かを大切に思う、押し付けがましくない優しさが感じられる。ケア・サービスという日本語もそんなニュアンスを漂わせるようになるはずである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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