ワインに関するモノローグ(前編)

🍷 饒舌に蘊蓄を傾けるワインの愛好者たちがよく槍玉に上がる。「美味しいものを知識や情報でとらえるな」という見解ゆえの批判もある。そもそも何かを嗜んだり何かに凝ったりすると、程度の差こそあれ「オタク化」する。ラーメンやサッカーや鉄道に詳しいアマチュアは批判されないが、ワインになると冷たい目で見られる。俗物スノッブだと見られてしまうのかもしれない。

🍷 ワインの名前、ブドウの品種、香りと味、シャトーやヴィンテージなどのワイン特有の用語が「ウザい」? もしそうならば、焼肉の肉の部位も焼き方も、神戸牛だの松阪牛だの佐賀牛だのという名称も同じことではないか。焼肉なら少しはわかるが、ワインはほとんどわからない向きが、焼肉の蘊蓄なら許容できるが、ワインの蘊蓄に対して偏見を持つだけの話だと思われる。

🍷 店で出される肉料理にどんな肉が使われてどのように調理されたか、値段がいくらかはせめて知っておきたい。「この肉は?」「さあ」というやり取りだけでは肉を口に運べない。名称と食材と値段不明の料理を食べるには勇気がいるのだ。そして、料理の名称と食材と値段の情報を知りたいという延長線上で蘊蓄を傾ける習慣が少しずつ身についていく。ワインは知識があるほうが愉しみが深まり、料理が美味しくなるという実感がある。

🍷 最近嗜み始めたと聞き、ワインを見つくろって弟に12本送った。弟夫婦は毎晩2人で缶ビール78本と焼酎を飲んでいるが、それを維持したままでワインも11本ペースで空ける酒豪である。自宅に送った12本は20日ほどで飲み干し、その後は自分でもいろいろと勉強して、ボルドーのメドックだのチリのカベルネ・ソーヴィニヨンだのと言い、ぼくよりも先にワインセラーを備えるようになった。

🍷 酒は弱くもなく強くもなく、毎日飲むわけでもないが、わが家にはかなりの本数のワイン、焼酎、ウイスキー、日本酒が揃っている。料理に合わせて適量をいただく。特に、ワインは週に23日程度でグラス2杯まで。いろんな種類のワインを飲みたい口なので、買うペースに消費が追いつかず、増えるばかり。オフィスを借りているテナントビルの1階にイタリアワイン専門のショップが10年前にできてからは、毎月5本ペースで買うようになり、数年後には自宅とオフィスで合計30本ほど蓄えていた。

🍷 アルコールと料理は発酵や醸造に深く関わる化学ケミストリーだと思う。ワインも化学の賜物だ。香りも味覚も成分もどれもがそう。加えて、温度、湿度、色、グラスなどの理系的要素と関わる。何も知らないまま単なるアルコールの一種と思っていた頃に比べたら少しはわかるようになった。高校時代に苦手だった化学のお陰である。

〈後編に続く〉