語句の断章(52)「もんがまえ」

構える格好をした漢字がある。たとえば門や口や包がそうだ。何かに反応したり備えたりして身構えているのではなく、それぞれ「もんがまえ」、「くにがまえ」、「つつみがまえ」という部首として漢字を構成している。住居の実際の門構えの意であり、部首の名称である「もんがまえ」が象形文字としてわかりやすい。

もんがまえの漢字はJIS1・2水準で64字あり、言うまでもなく、すべての漢字が「門」のDNAを引き継いでいる。最たるものが「開ける」と「閉める」だ。門あるところ、必ず開閉が伴う。開の「开」はケンまたはカイと音読みし、両手で門をあける様子だという。では、閉じるの「才」は? 突っ張り棒の斜め使いと直感したが、特に意味はなく、何となく門に才を合わせただけらしい。

もんがまえの漢字でユニークなのが「閃」。門の中に人がいて「ひらめき」とはこれいかに。実は、ちらっと見えたかと思うと隠れて見えなくなる様子。ずっと見えているのではなく、ちらっと見えるから一瞬ピピっとひらめくような感じがする。

「閑」はカン。「しずか」や「ひま」と訓読みする。門の中に木を配置しているが、木が門の前にあって門を遮っている状況という解釈がある。この場合は、「しきり」という成り立ちになるとか。

象形文字としておもしろいのが「閂」。「かんぬき」と訓読みする。門という字は見ての通り両開きの構造になっている。左右の扉が勝手に開かないように、一本の横木を通す。閂はその様子をよく示している。

もんがまえの64の漢字をすべてチェックして、「もんもんとする」の「悶」がないことに気づく。悶はもんがまえではなく、心を部首とした「りっしんべん」だと知る。ついでに補足すると、「問」も「聞」も門越しに誰かが問い誰かが聞いている雰囲気があるが、どちらももんがまえではない。問は「くちへん」で、聞は「みみへん」である。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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