語句の断章(57)衣替え

今日は101日。わが家には56種類のカレンダーがある。その一つ、洗面所の壁に吊ってるカレンダーは、今日が「衣替え」だと告げている。10月で他に印刷されているのが14日の「スポーツの日」と31日の「ハロウィン」。衣替えは、スポーツの日とハロウィンと堂々と肩を並べているのだ。

大阪では今週も最高気温30℃超えの日々が続くとの予報。明らかに残暑である。しかし、歳時というものは、実際の季節の変化とは無関係に型通りに暦に節目を刻む。衣替えも、まるで国民の休日を祝うかのように101日の枠に印刷されている。

衣替えの「ころも」は古めかしく響き、怠らずに執り行うべき儀式を思わせる。なにしろ更衣という字も「ころもがえ」と読ませるのだから手が込んでいる。衣替えの日を年中行事の一つとして捉えて、わざわざカレンダーに印刷するのは親切心かもしれないが、余計なお節介でもある。

年中行事の四季と現実の季節感がズレてきた今、暑さや寒さの変わり目と歳時が一致しない。春間近と秋間近の衣替えのタイミングは、風習や勤務先や学校ではなく、自分で決めるしかない。今日、タンスやクローゼットの整理整頓をするのは、少なくともわが住まう所では早過ぎる。半袖のTシャツ姿で眺める衣替えの文字が現実とシンクロしていない。

現在の衣替えは、冬から春・夏へと夏から秋・冬への年2回が一般的だが、江戸時代までは違っていた。冬から春、春から夏、夏から秋、秋から冬への変わり目の年4回だった。少々面倒だが、さぞかしお洒落で風情もあったに違いない。何よりも,今よりも四季のメリハリが利いていたのだろう。