「よく知らない」という自覚

梅田のある北区のすぐ南の中央区の住民だが、梅田のことをあまりよく知らない。行かないわけではない。むしろ、学生時代から今に到るまでちょくちょく出掛けている。迷って困り果てることはないが、必ず少し迷う。だいたいわかっているようで、実はあまりよくわかっていない。

梅田の駅前再開発計画がずいぶん長く続いていて、今もなお現在進行形である。うめきたプロジェクトという。これもぼくの梅田感覚を狂わせる一因。近頃誕生したグラングリーン大阪に人が集まり賑わう。梅田が盛り上がっているのである。そして盛り上がりに比例して物価も上がっている。


インド・ネパール・スリランカ料理はよく食べる。キャリアはかなり長く、初心者に蘊蓄したり指南したりできると思う。しかし、何事もそうだが、経験値が上がるにつれて知らないことも増えるものだ。何事も、たとえ得意な領域であっても、新しい情報がどんどん押し寄せてくる。

ここでは詳しいことは書かないが、カレーにつけて食べるパンの類にナン、ロティ、チャパティなどがある。日本のインド・ネパールの店では、本場ではあまり食べないナンが出てくる。チーズナンやガーリックナンというのもある。数年前に入った店で初めて「サダナン」という文字を見た。ナンではなく、「サ、ダ、ナ、ン」。

後で調べようなどとは思わない。すぐさま店員に聞いた。サダナンはプレーンのナンのこと。つまり、何も混ぜたりせず何も足さないシンプルなナン。メニューに「サダナンの追加は1枚無料」と書いてあるが、所望する時はナンと言えば済む。いつも食べていたナンの苗字は「サダ」だったのである。


世界史に比べると、日本の歴史に詳しくない。いろんな本を何冊も読もうとしたが、途中で挫折した。平安時代の貴族の生き様や文化と相性が悪く、たいていそのあたりで本を閉じた。縄文時代から飛鳥・奈良時代までは何度も読んでいるので、まずまずわかっている。貴族の時代をパスした後は一気に幕末・維新に飛んだので、そのあたりも少し知識はある。

秋分の日に自宅から安居神社まで歩いた。目的地はもうちょっと先だったが、迂回したり寄り道したりして1時間弱。神社は真田幸村終焉の地である。そのことは知っている。ふと、なぜか明智光秀を思い出す。この時代はほぼパスしているので本では読んでおらず、ドラマや歴史ドキュメンタリーで齧る程度。真田と明智、どちらが年長か歳の差はどのくらいか、言い当てる自信がない。

境内に石垣が積んであり、道場か修行場の立て札があった。これはいったい何か、気になってしかたがない。ネットで調べても何も出てこなかったが、翌日も辛抱して追いかけたら、明治時代に奈良からやって来た「中井シゲノ」という霊能者と巫女集団の話を見つけた。

関連する本も2冊あるようだが、まずはネットで少し深掘りしてみよう。よく知らないどころか、まったく何も知らないが、梅田やサダナンよりもおもしろいエピソードがありそうな気がする。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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