抜き書き録〈テーマ:辞典/絵典/事典〉

📖 『笑死小辞典』(フィリップ・エラクレス/リオネル・シュルザノスキー編;河盛好蔵訳)

この書をやがて死すべきあらゆる人びとに捧げるのを編者たちは幸福とする。

上記は本書の「序にかえて」の一文。この本を深刻に読むべきではないことを暗示している。世界の文学者たちは死について真面目に考えて名言を残し、かつ――それだけでは息が詰まるので――死を軽やかに取り扱っておもしろおかしく冗談っぽく迷言・・も書いた。

「今年死ぬ者は来年は死なずに済む」(ウィリアム・シェイクスピア)
「人は一度しか死なない。しかも永久にだ」(モリエール)
「私はできるだけ遅く、若いままで死にたい」(マルセル・プレヴォ―)
「僕は執行猶予付きの死刑に賛成だ」(ピエール・ダック)

最後の文、「執行猶予付きの死刑」とは死に帰結する人生のことを指している。

📖 『世界の椅子絵典』(光藤俊夫著)

これぞ「究極の心地よさ」と言える椅子を一度も所有したことがない。自分の体躯と気分にぴったり合う完璧な椅子ははたしてあるのだろうか。本書には目移りするほど斬新な椅子のイラストが収録されているが、サグラダファミリアでおなじみのアントニ・ガウディの手になる二人掛けの椅子が図抜けてユニークだ。

実はバルセロナのミラ邸でこの椅子に腰掛けたことがある。ガウディは「直線は人のものであり、曲線は神のもの」と言った。そのことば通りの曲線であり、座する者と葛藤しない座り心地だった。何よりも二人掛けに二人で座るのではなく、隣席を空けて一人で座るのがいい。新幹線で隣席が空いている時のあの気分の良さと同じである。

📖 『現代無用物事典』(朝日ジャーナル編)

平成元年発行の本である。時代が35年も経てば、当時の何もかもが今となっては無用だろうと思いきや、案外そうではない。

駅のアナウンス
どうする。不快97パーセントの親切過保護!

乗り換え情報も次の駅名も、要るか要らないかの二者択一なら要らない。外国ではアナウンスが流れない駅のほうが圧倒的に多い。それ以上に要らないのは車内アナウンスだ。始発駅を出てから3駅目までずっとアナウンスが続く電車がある。電車移動中にはアナウンスを聞くよりもしたいことがいろいろあるものだ。

書店のブックカバー
個性はあるがムダなのだ。十二単衣ひとえじゃあるまいし、本も暑くてかなわない。

えらく愉快そうに無用論を唱えるが、これは勇み足ではないか。ぼくは気にしないが、買った新品の本が汚れるのを嫌がる人もいる。電車内で読めば対面の人に書名が見える。それも気にする人がいる。ブックカバーくらいあってもいいではないか。実際、レジ袋が有料になったため、ブックカバーを所望する人が増えたようだ。ブックカバーは無料である。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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