イタリア紀行8 「アルノ川対岸散策」

フィレンツェⅡ

ミラノやローマからフィレンツェに入るには鉄道がいい。列車はサンタ・マリア・ノヴェッラ駅に着く。この中央駅からチェントロと呼ばれる歴史地区内のホテルへは、たとえ大きな荷物を持っていても歩くのがベスト。ミラノやローマと違ってフィレンツェは治安がいいので、見た目に明らかに観光客であっても心配はない。もちろん路線が充実している市内バスなら、たいていの場所に10分以内で行けてしまう。

空路フランクフルトからフィレンツェ空港に降り立ち、アルノ川対岸のサン・フレディアーノのアパートにタクシーで向かった。所要約30分。アパートで受け取った鍵は4種類あり、玄関の門、中門、3階通路の門、部屋の扉の鍵が束になっている。その束の重いことといったら、腕時計5個分と同じくらいだ。宿泊期間中は自己責任で管理する。したがって、外出時は半コートの内ポケットにずっしり忍ばせて歩かねばならない。

午後7時の到着。ちょうどいい時間である。食事処の夕刻の開店はおおむね午後7時から7時半。一番賑わう時間帯は9時から10時だ。アルノ川沿いの通りから一本内側へ入ったサント・スピリト通りへ出て、いかにも老舗っぽいリストランテに入る。サラミと生ハムの盛り合わせにハウスワインの赤を合わせ、パスタでしめた。この一帯は歴史地区ほどの賑わいはなく、ツアー客もほとんどやって来ない。しかし、地元の常連が通うトラットリアやリストランテが点在している。

翌朝。アパートなので朝食がついていない。近くのバールでカプチーノを注文し小さなパンで腹を満たす。さて、散策スタート。アパートから約600メートルの位置にあるポンテ・ヴェッキオの橋から南の丘陵へ。なだらかなサン・ジョルジョの坂を進むと、道すがら丘陵地帯独特の空気が漂ってくる。

かつての要塞跡そばのサン・ジョルジョの門からさらにサン・レオナルド通りへ入り、そこを左折していくと高台にサン・ミニアート・アル・モンテ教会が佇む。アルノ川を挟んで市街地が一望できる絶好の場所である。この教会の下に別のサン・サルヴァトーレ・アル・モンテ教会があり、すぐ眼下にミケランジェロ広場がある。広場まで下れば観光客がたむろしているが、そこからわずか300メートル上の高台は閑散としている。

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ポンテ・ヴェッキオ。向う岸右側の建物が有名なウフィッツィ美術館の一部。
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丘陵へ抜ける小径。瀟洒な住宅が続く。
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中心街のランドマーク「サンタ・マリア・デル・フィオーレ」のクーポラが見える。春間近な緑の濃淡の綾が目にやさしい。
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さらに進むと、左右の大きな木に挟まれて、凝縮された借景のように街が浮かぶ。
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サン・サルヴァトーレ・アル・モンテ教会前に出た。質素な教会という印象のまま通り過ぎた。後日旅行ガイドを見たら、ミケランジェロが「美しい田舎娘」と比喩したというエピソードを見つけた。ミケランジェロ大先生、絵筆やノミさばきだけでなく、ことばのさばき方も超一級である。
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サン・ミニアート・アル・モンテ教会のファサードは雅なロマネスク様式。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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