あれもこれもポルトガル

最近はカタカナ語が溢れているので、モノが国産か外来かの区別はつきにくい。以前は、カタカナで表記されていると外来語だろうと察したものだ。たとえば、あの化学実験用の容器「フラスコ」。元が“frasco”で、仮にそれが何語か知らなくても、外国由来だと見当がつく(実際はラテン語/ポルトガル語起源)。

ところが、モノと同時に外来語が紹介された江戸時代、比較的発音に忠実に漢字で表記されてそのまま明治大正昭和と使われたから、歌留多かるた煙草たばこ襦袢じゅばん合羽かっぱも元々日本語だと思われてきた。それぞれがまさかポルトガル語の“carta” “tabaco” “gibão” “capa”であるとは想像できなかったのである。

今では情報が流布して、カタカナで表記される食べ物、特にヨーロッパ起源のものはよく知られるようになった。フランスやイタリアやドイツまで取り上げるとキリがないので、ポルトガル語が出たついでにいくつか拾ってみた。パン(pão)、こんぺいとう(confeito)、ビスケット(biscoito)はすでにおなじみ。鯖寿司には、その形状からの連想でポルトガル語で「小舟」を意味する“bateira”てられた。カステラも「城」を意味するポルトガル語の“castella”由来である。

つい昨日のこと。懐かしい「丸ぼうろ」が売られていた。どこにでもあるお菓子だが、袋に佐賀の伝統銘菓と書いてあった。知らなかった。ところで、丸ぼうろなどは、何のことか知らぬままてっきり日本のものだ思っていた。調べてみたら「ぼうろ」は乳ボーロの「ボーロ」と同じで、焼き菓子の意の“bolo”。これもまたポルトガル語である。

かつて外来語に工夫を凝らして日本語に訳したり漢字を充てたりしたが、今となっては漢字ではなく、原語の発音に近いカタカナで表記するようになった。コンピュータをわざわざ電子計算機と訳してはみたが、モノになじむとその名称の翻訳や漢字が必要でなくなる。「葡萄牙」などはテレビの雑学クイズ番組以外で見ることはなくなった。