ヒーローの話

いろんなジャンルの「ヒーロー列伝」なる本がある。実は、15年前のノートを気まぐれにめくっていたら、そんな小話を綴っていた。と言うわけで、今朝はスポーツの話を書いてみる。

負けて銀、勝って銅

オリンピックや世界選手権では、それぞれのスポーツが独自の方法で金、銀、銅を決める。どの競技でも金メダリストは試合直後も表彰台でも歓喜している。ところが、敗者復活のある柔道やレスリングでは、悲喜こもごもの表彰式が見られる。金か銀を決着する優勝決定戦があり、銅かメダル無しを決める三位決定戦があるからである。

一回戦や二回戦の敗者は復活してももはや金、銀は取れない。よくて銅メダルである。三位決定戦には復活した敗者が出場することがある。金メダルを争う二人は準決勝を勝ち抜いている。銅メダルを競う三位決定戦の二人よりはおおむね力上位であり、現実に負けなしでファイナルに進んできた。

しかし、どうだろう。銀メダリストは最後に負け、銅メダリストは最後に勝っている。前者は試合後も表彰台でも敗北感を押し殺してうなだれている。後者は、一度負けた悔しさは尾を引くものの、敗者復活で拾われ、勝って銅メダルなのだから、涙にまみれることは稀である。銀メダリストは大会においてはヒーローの一人でありながら、ワンランク下の銅よりも辛い表彰式を迎える。

ヒーローインタビュー

ヒーローインタビュー

野球ではいわゆるお立ち台の光景。マイク片手にインタビューアーがヒーローを待ち受けて台上へと促す。そして、満員の聴衆の歓声と拍手が止むのにタイミングを合わせて精一杯マイクで声を響かせる。

「ホーソーセキ~、ホーソーセキ~」 ほら出た。必ず二度言う。実況中継を担当していた放送席に強く語り掛けるのである。元はと言えば、放送席の方が視聴者に向かって「では、ヒーローインタビューです」とマイクを現場に譲っているにもかかわらず。呼び掛けるべきは、放送席ではなく、球場を埋め尽くしたファンなり視聴者ではないか。

大したことを聞くわけではない。「いいピッチングでした!」か「見事なホームランでした!」と投げ掛ける程度である。「あの場面では何を考えてバッターボックスに入ったのですか?」に対しては、選手も「思い切り振って行こうと思っていました」くらいの答えしかない。外人選手の場合は通訳をはさむ。通訳は質問も感想もかなりアバウトに訳す。

それにしても、ヒーローへの質問が月並みである。それに対するヒーローの応じ方も月並みである。月並みなやりとりがヒーローを凡人にしてしまう。何よりも聞かされるぼくたちが気恥ずかしさを覚える。ヒーローの扱いに関してもっと勉強してもらう必要があるだろう。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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